教職調整額を10%へ引き上げ 中学校も35人学級に、両省合意

教職調整額を10%へ引き上げ 中学校も35人学級に、両省合意
折衝に臨む阿部文科相(左)と加藤財務相=代表撮影
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 教員の処遇改善で懸案となっていた教職調整額の引き上げを巡り、阿部俊子文科相は12月24日、加藤勝信財務相との2025年度予算案の折衝に臨み、来年度に教職調整額を現行の4%から5%に引き上げるほか、小学校教科担任制や中学校生徒指導担当教師の拡充などで教職員定数を2190人改善することで合意した。教職調整額は30年度までに10%に引き上げるとともに、26年度から中学校で35人学級を実施するための定数改善を行う。

 文部科学省は25年度予算案の概算要求で教職調整額を13%に一気に引き上げることを求めていたが、財務省は実効性のある学校業務の縮減策と連動していないことなどを理由に、働き方改革の進捗(しんちょく)による時間外在校等時間の縮減などを条件に、教職調整額を段階的に10%まで引き上げることを提案。両省の間で交渉が行われていた。

 大臣折衝では、25年度予算案で、小学校の教科担任制の拡大や中学校の生徒指導担当教師の配置拡充、多様化・複雑化する課題への対応などで、2190人の教職員定数の改善を行うこと、教員の処遇改善で、教職調整額を5%に引き上げることや、それに伴う校長・教頭などの管理職の本給改善、学級担任への義務教育等教員特別手当の加算に合意した。

 一方で、文科省の概算要求に盛り込まれていた管理職手当の改善は、本給を改善することで見送られた。高学年から中学年に引き下げることとしていた小学校の教科担任制の実施も、当初は3年生からを予定していたが、25年度は4年生からとなる。

 財務省が求めていた時間外在校等時間の縮減などの条件を付けずに、5%への引き上げが実現する。文科省によると、25年度の制度改正後の初任者の給与は、人事院勧告の影響も合わせ、年収ベースで15%増となるという。

 その上で、教職調整額は30年度までに10%への引き上げを行う。その中間段階である27年度以降に、両省で働き方改革や財源確保の状況を踏まえ、その後の教職調整額の引き上げ方などを検討する。

 また、学校の指導・運営体制の充実に関しては、4年間で計画的に行っていくこととし、26年度から中学校での35人学級の実施に向けた定数改善を行うほか、働き方改革に資する外部人材の拡充など、実効的な人員拡充策に取り組む。

 中学校での35人学級への移行は小学校と同様に学年進行になるとみられ、25年度中には義務標準法改正案も国会に提出される見通しだ。

 両省の合意事項では、部活動の地域展開や勤務時間管理の徹底、校務DXの推進などによる働き方改革を強力に推進することで、29年度までに平均の時間外在校等時間を約3割削減し、月30時間程度に縮減することを目標に掲げている。

 折衝後に文科省で開かれた記者会見で、阿部文科相は「(合意は)わが国の未来を担う子どもたちのために、教師への優れた人材の確保に向けた大変意義深いものになった。これにより、公教育の再生に向けて、教師を取り巻く環境が抜本的に変わっていく」と強調した。

 今回の合意について自己採点の結果を尋ねられると、「50年ぶりとなる処遇改善、また直近20年間で最大となる定数改善を盛り込むことができたことを考えると、私としては、文科省全体でみんなで頑張ってきて、80点ぐらいかなとは思っている。一方で、厳しい勤務実態を先生がしている学校現場の状況を見れば、及第点ぎりぎりの61点ぐらいではないか。(教員の)皆さんからしてみれば、まだまだ足りない状況だと思っている」と振り返り、今後の法改正に向けて、気を引き締めた。

◇ ◇ ◇

 両省の合意事項は次の通り。

 

教師を取り巻く環境整備に関する合意

標記について、以下の通り合意する。

 

1.教職調整額の率を令和12年度までに10%への引上げを行うこととし、時間外在校等時間の削減を条件付けすることなく、来年度に5%とし、以降確実に引き上げる。このため、給特法改正案を次期通常国会に提出する。

2.中間段階(令和9年度以降)で、文部科学省・財務省両省で「働き方改革」や財源確保の状況を確認しながら、その後の教職調整額の引上げ方やメリハリ付け、その他のより有効な手段なども含めて真摯に検討・措置する。

3.職責や業務負担に応じた給与とする観点から、学級担任への義務教育等教員特別手当の加算や若手教師のサポート等を担う新たな職の創設に伴う新たな級による処遇を実現するとともに、多学年学級担当手当の廃止など他の教員特有の給与について見直しを行う。

4.今後、指導・運営体制の充実を4年間で計画的に実施することとし、令和7年度においては、小学校35人学級の推進等に加え、小学校教科担任制の第4学年への拡大、新採教師の支援や中学校の生徒指導担当教師の配置拡充などに必要な教職員定数5,827人を改善する。

 また、財源確保とあわせて、令和8年度から中学校35人学級への定数改善を行うとともに、5.に示す「働き方改革」に資する外部人材の拡充など実効的な人員拡充策を講じる。

5.学校における働き方改革を強力に進めるため、学校・教員の業務見直しの厳格化及び保護者からの電話対応を含む外部対応・事務作業等の更なる縮減・首長部局や地域への移行や部活動の地域展開等による本来業務以外の時間の抜本的縮減、勤務時間管理の徹底、教育委員会ごとの業務量管理計画の策定、在校等時間の「見える化」、校務DXの推進、授業時数の見直し、長期休暇を取得できる環境整備などを行う。

 こうした取組を進めることを通じて、将来的に、教師の平均時間外在校等時間を月20時間程度に縮減することを目指して、まずは、今後5年間で(令和11年度までに)、平均の時間外在校等時間を約3割縮減し、月30時間程度に縮減することを目標とする。

6.将来の給特法及び教職調整額のあり方については、文部科学省において、時間外在校等時間が月20時間程度に到達するまでに、幅広い観点から諸課題の整理を行う。

 

令和6年12月24日

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