いじめにつながるかもしれない言動に気付き、自ら変えていく力を養おうと、東京都江東区立北砂小学校(小島崇義校長、児童437人)の6年生を対象にこのほど、応援を題材にした「道徳」の授業が行われた。子どもたちは、試合には勝ったものの、味方の応援に違和感を覚えた小学生のアニメーション動画を見て、いい応援の在り方を考えた後、プロバスケットボールチーム「アルバルク東京」のチアリーダーからダンスを学びながら、応援すること、されることの意義を体感していた。
2025-26シーズンから江東区をホームアリーナとする予定のアルバルク東京では、健康、成長、環境に関する社会課題の解決に取り組むプロジェクト「ALVARK Will」を展開している。その一環で、子どもの健康や成長にも影響するいじめについてアプローチしようと、いじめに関する教材開発や相談プラットホームなどを手掛けているスタンドバイと連携し、今回の授業を企画した。
授業は2時間構成で、1時間目は、アルバルク東京とスタンドバイなどが共同制作したいじめを考える無料教材「Changers(チェンジャーズ)」の「もえあがる応援席」を活用。
クラス対抗のバスケットボールの試合で主人公は大活躍するものの、試合が盛り上がるにつれて応援がヒートアップし、次第に相手チームをけなしたり、ヤジを飛ばしたりする展開となる動画を見て、なぜ主人公が試合に勝っても素直に喜べなかったのかを話し合った。
子どもたちは「勝ちにこだわりすぎて、お互いの選手の気持ちを考えていない」「自チームに不利なことは、マイナスに捉えるようになってしまう」などと意見を述べ合い、自分たちにも起こり得ることとして、どのような応援をしていけばいいかを考えた。
授業を受けた児童は「サッカーの試合に出ていて、応援される側で同じような経験をしたことがある。自分も相手も頑張っているから、お互いに嫌な気持ちにならないようにしたい」と感想を話していた。別の児童は「言ってはいけないことと言っていいことについて考えた。学校生活の中でも勝ち負けに関わるとつい熱くなってしまう。その一言で人間関係が変わってしまうかもしれないから、気を付けたい」と振り返っていた。
授業を行った6年1組担任の佐藤文久主任教諭は「応援する側、される側で視点が複数あって、子どもたちはそれぞれの立場になって、自分事として考えることができる教材だ」と話した。
1組と2組の合同となる2時間目は体育館に移動して、アルバルク東京のチアリーダーから、応援のダンスを教わった。一通り動きを習得すると、今度はクラス同士向かい合って、お互いにダンスを見せ、応援した。
指導したチアリーダーのRUNAさんは「学校生活では、部活動や運動会、レクリエーションなどたくさん応援する場面があると思う。そのとき盛り上がって熱くなっていると、気付かないうちに誰かを傷つけてしまうことを言ってしまうかもしれない。敵味方にかかわらずお互いを尊重して応援することが大事。つい熱くなって言い過ぎてしまったときは、今日学んだことを忘れずに生かしてほしい」と、子どもたちにエールを送った。
【キーワード】
道徳教育 生命を大切にする心や他人を思いやる心、善悪の判断などの規範意識を身に付けるのを目的に行われる教育。いじめが社会問題になったのを受け、小学校は2018年度、中学校は19年度から道徳が「特別な教科」として位置付けられた。
【訂正】8段落目の文中で「実際に試合の応援で使われているダンスの一部を教わった」とあったのは、正しくは「応援のダンスを教わった」でした。訂正し、お詫びします。