三河教育研究会 会長 柴田 昌一
読者の皆さんは、中学校の「技術・家庭科(技術分野)」(以下、技術科とします)と聞いて、どのような授業を思い浮かべますか?
木材を加工して本棚を作る様子でしょうか。はんだごてを使って配線し、ラジオを製作する様子でしょうか。それとも、プランターで野菜を育てている様子でしょうか。
産業教育の中核を担う技術科は、「ものづくりをする教科」ともいわれますが、近年の技術革新により、その内容は驚くほど多岐にわたるようになりました。例えば、トマト栽培の授業では、よりおいしいトマトを育てるために、土だけでなくハイドロカルチャー(水耕栽培)を活用した栽培方法を学び、LEDで日照時間を調整し、甘みを引き出すための水分管理を行います。さらに、これらの管理をプログラミングで実現する授業もあります。また、給食の配膳をロボットで補助することを目指し、センサーを活用して周囲の状況を判断しながら動く自律型ロボットを製作する授業も行われています。技術科は、まさにSociety5.0の実現を目指す学びの場へと進化を遂げています。
先日開催された愛知県ロボットコンテストには、創意工夫が光るロボットが出場しました。真剣な表情で操作する生徒たちの姿に感動を覚えました。しかし、このコンテストの出場台数は、近年、大幅に減少しています。その原因の一つとして、授業でのロボット製作が減少し、部活動で製作されたロボットが中心になっている現状が挙げられます。この背景には、3年生の技術科の授業時間が月にわずか2時間程度しか確保されていないことや、製作されるロボットの高度化・複雑化が影響していると考えられます。
昨年11月には、みよし市で愛知県中学校技術・家庭科研究大会が開催されました。多くの学校では、技術科と家庭科の教員がそれぞれ一人ずつ配置されているに過ぎず、複数校を兼務している教員もいます。今回の研究大会では、技術科、家庭科のそれぞれの授業づくりにおいて、各学校間の垣根を越え、地域の教員が協力して取り組むことで成果を上げました。今後は、技術科と家庭科の両分野において、授業時数の見直しや教員定数の増加、さらには教員養成大学の学びの充実が必要不可欠です。
産業教育は、日本の未来を創る上で、最先端技術への道しるべとして重要な役割を担っています。そのためには、教育体制を早急に整備することが求められます。生徒たちが将来、確かな技術力と創造力を持ち、未来社会を切り開いていけることを心から願っています。
(岡崎市立葵中学校長)