教育課題の解決に向け、先駆的な研究に取り組む東京都教職員研修センターはこのほど、2024年度の教育課題研究発表会を都内で開催した。不登校児童生徒への支援に関する研究では、不登校が生じない魅力ある学校の6要素について、デジタルを活用した授業デザインに関する研究では、子供の主体性を引き出す授業デザインについて報告された。
不登校児童生徒への支援に関する研究では、不登校経験者などが通う都立高校「チャレンジスクール」6校の教員149人と生徒56人に、アンケート調査やインタビューを実施。KJ法的分析で生徒の語りを「魅力ある学校(学校でしか提供できない魅力)」「居場所づくり(教職員が主導)」「きずなづくり(児童生徒が主体)」の3つの柱に分類し、不登校が生じない魅力ある学校の要素として言語化した。
その結果、不登校が生じない魅力ある学校の要素として、「安心感を持てるコミュニケーション」「心身が落ち着く環境設定」「多様な交友関係を育む活動設定」「生徒主体の学びを支える学習」「可能性を広げる選択型授業」「心身の状況に応じた学び」の6つが浮かび上がった。
同研究について発表した都教委の指導主事は「これら6要素を手掛かりに、各学校の実態に応じた未然防止策を検討することで、不登校児童生徒の数が急増する現状を緩和させることができるのではないか」との仮説を述べた。
また、今後の展望について、各学校でできる居場所づくりを促進するための研修や、不登校支援に成果を上げている学校から実践例を収集し、魅力ある学校づくりの研修の質を向上させていくと説明した。
個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた、デジタルを生かした授業デザインの研究では、「自律した学習者の育成を目指した授業デザイン」と「授業における教員の役割」の具体化を図ってきたという。
同研究は、都教委の指導主事が研究協力校に出向き、教員と一緒に授業を作っていく伴走型支援を取り入れて進められた。
報告した都教委の指導主事は「学習に必要な情報を、教員からその都度与えられながら学習を進めるのではなく、自ら取りに行く場をデザインすることで、情報活用能力を育み、子供の主体性を引き出すような授業デザインを行った」と強調した。
具体的には、多様な学習に合わせた座席配置などの「アナログ環境」と、課題ワークシートや学習に必要な情報をクラウドで一元化するなどの「デジタル環境」を整えていった。
また、課題の設定においては、学びの手引の提示や、単元の流れの説明、学習計画表の作成などを取り入れ、児童生徒が見通しを持てるように工夫。学習環境や学ぶ相手を自ら選択したり、自分のタイミングで実験器具や教材を選択したりできるなど、子供たちは自己選択を重ねながら学習活動を行い、学習内容をまとめるなどの振り返りも毎時、実施した。
こうした授業における教員の役割については、▽子供の学びを見守る▽支援が必要な子供に伴走する▽学習環境を再構築する――など、デザインした意図通りに子供たちが学習できているかを観察し、子供が困った時に適切な指導や支援をすることだとした。
加えて、研究協力校では「学びに向かう力」「自立した学習者の姿」について指標を作成し、検証単元の前後で調査を実施し、子供たちの変容を見とってきた。それによると、単元前と後では、全ての項目・校種で上昇が見られたという。
都教委の指導主事は「授業デザインの具体例や教員の役割を示すことができ、自律した学習者を育成できる可能性を数値で示すことができた。こうした学びを従来の一斉指導と融合させていくことが重要だ」と締めくくった。