小池都知事「学びの在り方そのものを改革する」 都総合教育会議

小池都知事「学びの在り方そのものを改革する」 都総合教育会議
総合教育会議であいさつをする小池都知事=撮影:松井聡美
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 東京都は2月12日、今年度2回目となる総合教育会議を開催し、東京都教育施策大綱(案)について議論した。大綱で特に重要で優先的に取り組む事項の一つ「『新たな教育のスタイル』を都立高校から展開する」に焦点を当て、委員からは「現在の学校システムを変えることで、不登校という概念をなくすことができる」「教員の意識変革とリスキリングが必要」などの意見が出された。小池百合子都知事は「東京から学びの在り方そのものを改革し、新たな教育のスタイルを展開していく」と力を込めた。

デジタルとリアルの最適な組み合わせによる個別最適な学び

 都では2021年3月以来、教育施策大綱を新たに取りまとめる。大綱において特に優先的に取り組むべき事項として▽「新たな教育のスタイル」を都立高校から展開▽デジタルを活用した学び方の転換▽世界を舞台に活躍できる人材の育成▽一人一人の子供の状況に応じたきめ細やかな教育の充実▽インクルーシブな教育の推進▽子供たちの学びを支える教職員・学校の力の強化--の6つを掲げている。

 そのうち、この日の会議では、「『新たな教育のスタイル』を都立高校から展開する」に焦点を当て、議論がなされた。社会が大きく変化する中、学校のスタイルがほぼ変化していないことを指摘し、学びの在り方そのものを見直し、デジタルとリアルの最適な組み合わせによる一人一人の興味関心に応じた新しい学びを開発し、まず都立高校から展開していくとしている。

 新たな教育のスタイルには、LPX(Learning Platform Transformation)により、「場所・時間」「学習内容」「学び方」「学習成果・評価」を変えていく。

 具体的には「場所・時間」については、学校外の専門機関との連携強化や、民間事業者による多彩な講座など、学校のみならず外部機関やオンラインなどのさまざまな場で、自分に合った時間割で学べるようにしていく。「学習内容」は、生成AIやデジタル教科書の活用など、専門家などとも連携し、デジタルも活用しながら探究などの実践的な学びを展開していく。

 また、オンデマンド教材などによる単位認定など、一人一人の知識や興味関心に応じた学びを実現できる環境を整えるなど、「学び方」も変えていく。加えて「学習成果・評価」は、学びの成果の可視化や、CBT(Computer Based Testing)による納得性の高い評価など、子供が学びのデータを活用してアセスメントや目標設定などを行い、自ら学びを創造していく。

教員の大きな意識変革とリスキリング

 新たな教育のスタイルについて、秋山千枝子委員は「義務教育段階も含めて、学習指導要領に示された学習内容やこれまで当たり前だった学習活動や行事などを大幅に減らし、子供にも教員にも時間的、精神的余裕を持たせることが必要だ。一人一人の興味関心や意見を大切にする個に応じた支援ができるようにするには、教員一人でなく、サブの教員や支援者が入る複数での指導ができる環境を整えることが必要」と意見を述べた。

 加えて、いつでもどこでも学べるようにすることについて、「学校に行かないと、学習や学習成果の評価ができないという現在の学校システムを改革することで、東京がいち早く不登校という概念をなくすことができるのではないかと期待している」と述べた。

 宮原京子委員は「教員側にとっては大きなチャレンジになる。持っている知識を教えることから、学びのデザインを一緒に考え、伴走するスタイルになる。教員の大きな意識変革とリスキリングが必要であり、そこをフォローしていかなければいけない」と指摘した。

 また、大綱案の「子供たちの学びを支える教職員・学校の力の強化」について、高橋純委員は「新しいチャレンジをしたいとか、学びたいという教員たちのサポートを充実させていく必要がある。また、基本的な時間割の編成などは手作業で行われている。一人一人の興味関心に合わせて学ぶとなると、学ぶ場所や職員の配置、時数の計算などを一気に解決できるようなICTの仕組みが必要で、都が先んじて作っていってほしい」と要望。

 さらに「教員が職員室以外で仕事ができない仕組みが、まだまだたくさん残されている。区市町村立学校だと、教員がメールアドレスを持っていないこともある。環境面でも働き方改革を進めていくことが重要ではないか」と述べた。

 この日の議論を受け、小池都知事は「教育は、子供、親、教員、社会のニーズ、国際化など、全庁にまたがる課題だ。全庁一丸となって、子供一人一人に寄り添った施策を進めていく。目指すところは誰一人取り残さず、全ての子供が将来への希望を持って自ら伸び、育つ教育。東京から学びの在り方そのものを改革し、新たな教育のスタイルを展開していく」と強調した。

 今後、教育施策大綱案については、3月13日までパブリックコメントを実施し、それらを踏まえて3月末に決定・公表される予定。4月以降には順次、具体的な取り組みを展開していく。

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