「このニュース、どう思う?」――。日々報道される教育ニュースについて、教員などが学校現場の目線で語る新コラム「職員室の立ち話」がスタートしました。ぜひ、同僚と「立ち話」をするような感覚でお楽しみください。
今日の話題
「悩まず相談を」 阿部文科相が発達障害の生徒らにメッセージ動画
今日はこの人と立ち話
東京都公立中学校 高松慶多主幹教諭
私は今、中学校で特別支援教室(通級)の巡回指導教員をしていますが、高校への引き継ぎには課題を感じています。中学校まで通級指導を受けてきた生徒たちの進学先の高校には、通級指導が整っていない場合が多く、中学まで受けてきた合理的配慮が受けられないこともあるんです。
この記事の中でも指摘されていますが、通級による指導を受けている児童生徒は全国で約20万人いますが、そのうち高校生は約2000人にとどまっています。通級による指導を行っている公立高校は、全体の約10%と非常に少ないんです。
こうした現状に私自身もできることはないかと思い、高校で小中学校の通級指導の在り方や事例などを話す場をつくれないか、アプローチしています。今回の阿部俊子文科相のメッセージ動画もそうですが、高校の先生たちにもっと通級や特別支援教育のことを知ってもらうことが、高校での通級指導の充実にもつながっていくと思うので、実現できるよう頑張りたいです。
中学校では、以前に比べると特別支援の意識も高まってきているのですが、通常学級から通級に異動してきた先生は「通級って何を指導すればいいの?」「自立活動って何?」と困っている人も多いんです。通級の先生だけでなく、全ての先生の意識を高めていくことが課題だと思っています。
例えば、生徒が問題行動を起こしたとき、目の前で起きている行動だけを見がちですが、なぜその生徒がそのような行動を取るのか、その生徒の背景にも目を向けてほしいなと思います。啓発授業や校内研修などでそうした理解度を深めていきたいねと、通級の先生たちと話しています。
また、どの市区町村にも特別支援教育のスペシャリストの先生がいると思います。もし校内にそういう先生がいなくても、困った時には隣の学校や自治体のスペシャリストに相談できるような、先生同士の横のつながりも広げていけるといいですよね。
通級の先生は、通常学級の先生と比較すると時間的な余裕があるので「通級の先生は楽でいいな」と思われているかもしれません。でも、私は通級の先生に、時間的余裕も心の余裕も必要だと思うんです。
なぜなら、通級には本当に困っている生徒が来ています。困難を抱えた生徒やその保護者が「話を聞いてほしい」「相談したい」となった時に、いつでも余裕を持って対応し、寄り添って話を聞けることが、何より大切なのではないでしょうか。
【プロフィール】
高松慶多(たかまつ・けいた) 東京都公立中学校主幹教諭。特別支援教室巡回指導教員。これまで教務主任、生活指導主任、研究主任を歴任。「自己肯定感を高める学級づくり」で全国発表。またNHK「おとなりさんはなやんでる。」にて学級の取り組みが取り上げられた。「あなたの心に火をつけろ!マッチ先生」としてSNS発信や、熱のある講演で聴いた人の心に火をつけている。