学校の指導運営体制の強化や教員の処遇改善を目的に、新たな職・級として創設される見通しの「主務教諭」について、現職の教員や教育研究者らで構成される「給特法のこれからを考える有志の会」は2月26日、導入見送りを求める記者会見を開いた。有志の会が行った導入見送りを求めるオンライン署名は、4万6000筆を超えた。有志の会では、主務教諭の導入によって学校組織の階層化が進み、同僚性が失われると警鐘を鳴らしている。
昨年8月の中教審答申で打ち出された新たな職・級は、現在の教諭と主幹教諭の間に位置付けられ、学校内外との連携・調整や若手教員のサポートを担うことが想定されている。今国会で教職調整額の引き上げなどとともに、この新たな職・級としての主務教諭を設ける法案が提出されている。
有志の会では、この新たな職・級の創設に着目し、導入に反対するオンライン署名を昨年10月から行ってきた。2月23日の時点で4万6155筆の賛同が寄せられている。
この署名では、中教審の特別部会で参考にされた東京都の「主任教諭」の事例から、新たな職・級の創設によって、教諭の基本給が引き下げられる恐れがあるとし、新たな職・級の導入は同僚性を重視してきた日本の学校組織の文化を変えてしまいかねないと強調。導入見送りを含めた慎重な審議を求めている。
要望書では、仮に主務教諭を制度化するのであれば、こうした懸念点を払拭する施策として▽教諭の基本給は下げない▽自治体で条例を制定する際には、教員の意見を最大限尊重する▽学校の組織を大きく変えないように主務教諭は各校で1~3人程度にとどめ、従来の主任手当を残す▽主務教諭の選考基準に、働き方改革への取り組みも加える――などを提言している。
有志の会メンバーで岐阜県立高校教諭の西村祐二さんは「こんな制度を入れなくても、制度導入の目的として文部科学省が言っていることは達成できる。例えば主任などの処遇改善が目的であれば、主任手当を2倍にすればいい。若手の育成が目的であれば、今でも学校に配置されている初任者研修の指導教員が、ちゃんとその仕事に専念できるように、時間的配慮をすればいいだけだ。この制度は全く必要がないもので、見送りを求めたい」と呼び掛けた。
署名に賛同した明治大学准教授の鈴木雅博さんは「主務教諭制度は特定の職務に結び付いた役職をつくるわけではなく、単純に言えば階級を追加するだけだ。つまり、階層性を重層化して強化する。これが主務教諭制度の本質だ」と指摘。
限られた管理職と教諭で構成される学校の組織は、よく「鍋ぶた型」と呼ばれるが、ピラミッド型組織が抱えている課題を克服するものとして注目されているフラット型の組織に近いと解説した上で、「フラット型の組織で、学校の組織効率が高められているとも言える。主務教諭の中から主任を選ばなければいけないといったことになると、校長の裁量も縮小することになり、組織マネジメントの面からも良いことではない」と話した。
有志の会では近く、文科省に署名と要望書を提出する。
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主務教諭 学校の組織的・機動的なマネジメント体制の構築を目的に2024年8月の中教審答申を踏まえ、教諭と主幹教諭の間に設けられる予定の新たな職・級。学校内外との連携・調整や若手教員のサポートなどを中心的に担うことなどが想定されている。