(提言)科学と人間性

(提言)科学と人間性
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岡崎市小中学校長会長 児玉 洋行

 昨年は、藤子・F・不二雄さんの生誕90周年でした。代表作「ドラえもん」の秘密道具には、糸なし電話など実現化されたと思われるものがいくつかあります。藤子さんの想像力と実現した人間の創造力に感動します。現代のAI進化は、その秘密道具の更なる実現化を予想させます。

 しかし、それは、夢あることばかりとは言えないように思います。あるCMで、人が遅刻しそうになった言い訳をAIに求める演出がありました。AIは、まず言い訳をしようとする行為をたしなめますが、求めに応じて言い訳を提案します。面白い演出ではありますが、笑いごとではないように思います。

 これまで人類は、先人や自身の知識と経験から、さまざまなことを想像し、人生を豊かなものにし、社会を創造してきました。そして、学校は、未来の担い手となる子どもたちに、その基盤となる人間性を育む場所となってきました。AIは、それらの一助となることが期待されています。

 しかし、このCMのように、もしもAIが人間から想像や倫理を思考する機会を奪う社会が到来してしまったら、人間社会はどうなるのでしょうか。考え過ぎかもしれませんが、AIに支配されてしまうSFのような世界ができあがってしまうのでしょうか。そして、学校は、どう豊かな人間性を育むべきなのでしょうか。

 そのようなことを思う年末に、「小学校~それは小さな社会~」という映画を観ました。日本のある小学校を取材したドキュメンタリーで、海外でも話題になったそうです。そこには、給食、掃除、委員会、行事など、日本のどこの学校にもある日常の中で成長する子どもたちの姿、それを支える教師たちの姿が映し出されていました。「6歳児は世界のどこでも同じようだけれど、12歳になる頃には、日本の子どもは〝日本人〟になっている」と紹介されています。日本の学校が、学校生活すべてを学びの場として、子どもたちの豊かな人間性を育んできたことを再認識しました。

 「ドラえもん」の多くのお話は、秘密道具に頼りすぎたのび太が、痛い目に遭って後悔して締めくくられます。藤子さんが、発達するであろう科学と人間性との関係に警笛を鳴らすかのようです。

 (岡崎市立竜海中学校長)

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