管理職研修「審査論文をどう書くか」(122)

管理職研修「審査論文をどう書くか」(122)
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論文テーマ

 激しく変化する社会において、社会的・職業的自立に向けて基盤となる能力や態度を育てることがますます重要となり、キャリア教育の充実が求められています。あなたは、教頭としてキャリア教育をどのように推進しますか。具体的に述べなさい。

テーマの分析・解説

 「キャリア教育」という文言が中教審答申で登場したのは2000年のことである。そして06年には文部科学省により手引きが作成され、各校での取り組みが求められてきた。さらに、現在の学習指導要領においても総則の中で「キャリア教育」が明記されている。

 本テーマでは、「社会的・職業的自立に向けての基盤となる能力や態度」を育成するための具体的なキャリア教育推進に向けた教頭の役割を書き述べていきたい。そこで、(1)「キャリア教育推進のための体制づくり」(2)「キャリア教育を系統的に進めるための計画づくり」(3)「保護者や外部との連携づくり」の3点を柱に具体例を示す。

 

はじめに

 近年の人工知能の発達は目覚ましいものがある。そのことにより、データ入力や事務作業など、多くの仕事が人間を必要としなくなると言われている。逆に、今は存在しない職業が生まれる可能性もある。このように、多くの職業が変革を迎える時代を前にしている。また、オンライン上でのやりとりが増え、対面でのコミュニケーションの機会が減少しているなどの環境の変化から、子供たちが人間関係をうまく築けない、自己決定ができない、将来に希望がもてないといった課題が挙げられている。子供たちが希望をもって自立的に未来を切り拓くための能力や態度を育成しなければならない。このような現状から、キャリア教育をどう進めていくかは喫緊の課題といえる。そこで、教頭として校長の意を汲み、以下の3つの視点から取り組みを進める。

1 キャリア教育推進のための体制づくり

 キャリア教育は、全校で取り組む必要がある。キャリア教育の理念、目標、育成する資質・能力、教育内容、指導方法などは各学校が決定しなければならない。これらのことを十分に共通理解した上で教育活動を行うために、研究推進組織を活用しながら、各学年のキャリア教育担当者を決め、全校で取り組めるような体制づくりを教務主任とともに進める。

 キャリア教育を充実させるためには、指導する教職員の指導力向上が欠かせない。中には、キャリア教育と職業教育との区別がつかない教職員もいるかもしれない。そこで、教務主任や研究主任と協力して研修の機会をもてるようにする。方法としては、先進校の取り組みの紹介、外部講師の招聘、教職員支援機構の動画教材の視聴などが考えられる。このように、まずは組織と研修の体制づくりを進める。

2 キャリア教育を系統的に進めるための計画づくり

 キャリア教育は、子供たちの発達段階に応じて、自己と働くことを適切に関係付け、取り組みを展開する。子供たちのキャリア発達を促進するためには、まずは必要とされる資質・能力を決めなければならない。この資質・能力は、文科省の手引きでは基礎的・汎用的能力として4つの能力が挙げられている。そして、各校で求められるのは、これらの資質・能力の具体化である。例えば、「自己理解・自己管理能力」は「振り返る力」など、各校の捉えを明確にする必要がある。その上で、系統的・組織的に指導するための年間計画を作成する。作成にあたっては、各教科・領域との関連、学校行事の活用、学級活動への位置付けなどを考えたい。教頭としてこのような計画づくりまでの流れを助言していく。

3 保護者や外部との連携づくり

 キャリア教育は、学校だけで進めればよいわけではない。保護者の理解を得ることは非常に重要である。そこで、学校だより、ホームページなどを通して、各校のキャリア教育の方針や指導内容を発信し、保護者の理解を得る。また、「キャリアパスポート」を有効に活用するために、保護者の協力を依頼する。学期や学年の節目において、単にコメントを書いてもらうだけではなく、これまでの取り組みを一緒に振り返りながら対話をしてもらうことで、活動についてのよりいっそうの理解につながる。

 地域の商工会、活躍する卒業生、地元の商店、マナー講師など、地域や外部との連携も図りたい。身近にある教材や人材の有効活用は、子供たちにとってもキャリアが身近に感じられるよい機会となる。連携のための渉外の一助を担っていく。

おわりに

 子供たちが、自分の将来に夢と希望をもって生活することは、私たち教職員や保護者の願いである。キャリア教育の推進は、学校生活と社会生活や職業を結び、一人一人のキャリアの発達と自立を促すことにつながる。私は教頭として、校長の指導のもと、子供たちの夢ある将来に向けて、教職員の先頭に立って、教育活動に全力で取り組んでいく所存である。

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