放課後児童クラブ(学童保育)が子どもを長時間受け入れた場合、交付金を加算する制度について、三原じゅん子こども政策担当相は3月11日、閣議後の記者会見で「1日6時間以上、午後6時を超えて開所する場合」という現在の加算要件を、来年度から見直す方針を明らかにした。1日6時間以上開所の要件を撤廃し、午後6時30分を超えて開所している事業所を対象とすることとし、2025年度当初予算案に盛り込んでいる。
学童保育の開所時間に関しては会計検査院が3月7日、「長時間加算を計上した多くの支援単位(学校のクラスに相当)で要件を満たしていない」「準備時間を含めた開所時間の解釈にばらつきがあった」といった点を指摘し、実態を反映した合理的な制度設計とするよう、こども家庭庁に対して意見を示していた。
三原担当相は11日の閣議後会見で「現場の実態を把握しつつ適正な予算執行に努める。保護者の就労と子育ての両立を支える放課後児童クラブの事業をしっかり推進していきたい」と述べ、「開所時間が6時間を超える事業所は少なく、平日午後6時を超えて開所する事業所は8割を超えている。25年度以降、1日6時間の要件を撤廃し、平日午後6時30分を超えて開所する場合に補助する予定」と説明した。
学童保育は共働きやひとり親の保護者が就労するなど、昼間家庭にいない児童の居場所を確保する事業だが、開所時間が保育所に比べて短く、子どもの小学校入学とともに保護者の就労環境に影響したり、子どもの預け先に困ったりするなど、いわゆる「小1の壁」に直面する課題があった。こども家庭庁では「小1の壁」解消のため、学童保育の開所時間延長を誘導する目的で、午後6時を超えて開所する事業所への交付金加算を設定していた。
この交付金加算制度について、会計検査院が13都府県の86市区町1万949支援単位を抜き出して21、22年度の交付金支給状況を調べたところ、84%に当たる85市区町9184支援単位が午後6時を超えて開所し、このうち80市区町5434支援単位が加算を計上していたが、5299支援単位は授業終了時刻より前に開所時刻を設定していたことが分かった。96%の5109支援単位は加算の要件を満たしていないことが判明。一方で42市3750支援単位は午後6時を超えて開所しているが、平日の開所時間が1日6時間を超えていないことから加算を計上していなかった。
結局、午後6時を超えて開所している9184支援単位のうち、96%に当たる8855支援単位は加算対象とならない状況で、会計検査院はこども家庭庁に対し、制度の在り方を検討し、目的に沿った合理的な制度設計とするよう意見を示した。また、準備時間と開所時間の関係が具体的でない点も指摘した。
会計検査院はこれらの意見を取りまとめた上で3月7日に公表しているが、こども家庭庁とは継続的にやりとりをしており、同庁は24年12月に改めて自治体に対して準備時間は開所時間に含まないことを通知した。一方、平日に1日6時間以上の開所時間を確保する学童保育は極めて少なく、加算要件から撤廃。また、午後6時を超えて開所している学童保育が8割を超えたことから、開所時間延長を現実的に誘導する目的で加算要件を「午後6時30分を超えて開所」に変更する方針を定めた。