衆議院の文部科学委員会が3月12日開かれ、文部科学行政の基本施策を巡って質疑が交わされた。この中で、自民党、公明党、日本維新の会で合意した、いわゆる高校無償化を巡って、「政策的効果をしっかり把握すべきではないか」「対象は日本国民に限定すべきではないか」などと質問や意見が相次いだ。
高校無償化を巡っては、3党合意の結果、今年4月から所得制限をなくして、国公私立を問わず高校生のいる世帯に年間11万8800円の就学支援金を支給し、来年4月からは私立高校も所得制限を撤廃し、上限を年間45万7000円に引き上げることが決まっている。現在、3党で制度設計に向けて協議が続けられている。
これについて質問や意見が相次いだ。うるま譲司議員(維新)は、先行して私立高校の無償化を進めている大阪府などで中退率が低下する効果が出ていることを挙げ、「中退率が減ることで期待生涯賃金が増えて、政策的効果が大きいとの研究もある。これから財源を獲得する上で、政策的効果を文科省としてしっかり把握すべきではないか」と質問した。
これに対して同省の望月禎初等中等教育局長は「就学支援金制度の導入時から現在にかけて、経済的理由による中退者は都道府県へのアンケートでも減少している」と一定の効果は出ているとの認識を示し、「この制度のみでいろいろな政策の波及効果を検討するのは難しいと思うが、3党合意に基づく新たな支援ということで、さまざまな観点から検討しないといけないと思う」と述べた。
同じ維新の高橋英明議員は「教育には授業料以外にも入学金などたくさんお金がかかるので、真の教育の無償化を目指したいと考えている。この無償化は日本国民に限定すべきと思うが、どう考えているか」と外国人への対応について質問した。
これについて阿部俊子文科相は「現在、受給資格は高校などに在籍する生徒または学生で日本国内に住所を有するものと規定しており、国籍要件は定めていない。このため外国籍や海外からの留学生も、資格を満たす場合は対象になる。他方で3党合意では収入要件撤廃を前提に、支援対象者の範囲の考え方などさまざまな論点について検討するとしており、文科省としては状況を踏まえながら必要な対応をしっかり検討する」と答えた。
与党側からも質問や要望が出された。柴山昌彦議員(自民)は「私立高校無償化で、公立高校の志願者が減るとの懸念が示されている。定員割れが見込まれる公立高校の役割を私立高校が果たせるのか、人材の種別にも言及して見解を聞きたい」と質問した。
これについては武部新文科副大臣が「特に専門高校は80%が公立で、地域産業の発展を支える人材育成に影響を及ぼすと考えられる。引き続き3党の枠組みで、専門高校を含む公立高校への支援の拡充などに取り組むと承知しており、文科省としても状況を踏まえて必要な取り組みをしっかり進める」と答弁した。
これを受けて柴山議員は「特に工業高校を心配している。これからは専門的な工業人材育成のニーズが増えるはずであり、今後の産業ニーズも踏まえて制度設計をしてほしい」と要望した。