新年度控え「平時のいじめ備え」徹底を 文科省有識者会議

新年度控え「平時のいじめ備え」徹底を 文科省有識者会議
新年度に向けたいじめ予防対策などが議論された会議=オンラインで取材
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 学校でのいじめ対策などを検討する文部科学省のいじめ防止対策協議会が3月19日、オンラインで開かれ、新年度を前にいじめの未然防止などをテーマに議論が交わされた。いじめの認知件数や重大事態の発生件数が過去最多に上る中、委員からは特に学校現場でいじめ防止対策推進法や学校いじめ対策組織への理解が進んでいない状況が指摘され、新年度に向けて改めていじめに対する「平時から備え」の徹底を求める声が相次いだ。

 同会議の開催は、昨年8月にいじめ重大事態調査ガイドラインが改訂されて以来、今年度3回目。文科省はガイドラインを踏まえて今月6日、新年度を前に全国の学校にいじめ対策に関する通知を出しており、いじめの未然防止を巡って改めて意見が交わされた。

 会議では初めに文科省の担当者が、同省の調査でいじめの認知件数や重大事態件数が過去最多に上っている状況に触れた上で、昨年11月の「いじめ防止対策に関する関係省庁連絡会議」で決まったいじめ防止対策の強化や、全国への通知内容について説明した。

 全国の学校への通知では、「平時からの備え」として、年度初めの職員会議や教員研修などで、学校いじめ防止基本方針やいじめ防止対策推進法について理解を深めるとともに、全ての学校に設置されている「学校いじめ対策組織」が、いじめ防止や早期対応の中核組織であることを全教職員で確認することなどを求めている。また、教育委員会に対しても、平時から首長部局や医療機関などと連携しておくことなどを求めている。

 担当者は「重大事態調査ガイドラインのチェックリストを活用して平時からの点検をしていただき、学校現場でしっかりいじめ対策に取り組むようお願いする趣旨で通知を出した」などと説明した。

 これに対して各委員が意見を述べた。八並光俊委員(日本生徒指導学会会長・東京理科大学教授)は、児童生徒の自殺に触れて、「国の調査でいじめ問題で中学生5人、高校生2人の自殺が確認された。子どもの自殺は非常に大きな社会問題であり、国としていじめ自死ゼロ、重大事態ゼロを目指して取り組むべきだ。こうしたデータもきちんと示してほしい」と要望。また、学校現場でいじめ防止対策推進法などへの理解が進んでいない実態を指摘し、「いじめ対策は地域総がかりであたるものであり、先生をはじめ地域や保護者、子どもたちが共通理解するように取り組んでほしい」と改めて求めた。

 中田雅章委員(日本社会福祉士会副会長)も、いじめ重大事態の調査に関わった経験から、「教師が学校いじめ対策組織について認識していないなど、学校の組織がうまく機能していないと感じることがある」と指摘した。また、「調査をして記録がないことや、個人で記録して他の先生に共有されていないことも多い。校務支援システムもあるので、記録の共有化も平時からの備えの大事なポイントであり、新年度に向けて今一度、学校に周知を図るようお願いしたい」と重ねて要望した。

 一方、こども家庭庁の「いじめの重大化要因等の分析・検討会議」座長も務める清原慶子委員(杏林大学客員教授・前東京都三鷹市長)は「いじめと自殺、不登校、さらに暴力は密接に関連しており、相互の関係に注目して関係性や要因を分析していく視点が重要だ。現在、こども家庭庁で自殺の分析を深めており、いじめの未然防止やいじめが起こらない風土づくりに結び付けたいと考えている」と述べ、省庁の枠を超えていじめや自殺対策を進めたいとの思いを語った。

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