公益財団法人「東京都医学総合研究所」と東京大学は3月19日、日英両国の若者7100人を対象にした思春期のメンタルヘルスに関する国際比較研究で、女子の抑うつ症状は男子に比べ重く、成長とともにその格差は広がったと公表した。抑うつ症状の男女格差は日本より英国の方が大きく、思春期に急激に拡大するとしている。研究チームは「若者のメンタルヘルスの男女格差が、社会や文化の影響を受けることを示している」として、格差の解消には「若者を取り巻く社会環境を変えることが重要と考えられる」と分析した。
この研究は、同研究所社会健康医学研究センターの山崎修道副参事研究員、西田淳志センター長、同学大学院医学系研究科の笠井清登教授、英ロンドン大学のジェンマ・ノウルズ講師ら研究チームと、調査に参加した7100人の若者が共同で実施。研究チームは東京都内と英ロンドン市内に住む9~16歳の男子3587人、女子3513人に調査を行い、成長とともに男女の抑うつ症状がどのように変化するのかを分析した。
調査結果によれば、子どもの抑うつ症状の評価尺度「気分と感情に関する質問票(SMFQ)」のスコアは男子より女子の方が高く、日英共に成長に伴って悪化した。東京では11~14歳の間に男子のスコアが減少したものの、女子は増加するなど男女差が出現。一方、ロンドンではすでに11~12歳の時点で男女差が顕著に。男女差はいずれの国でも年齢とともに拡大した。
加えて、ロンドンの女子は東京の女子に比べ4倍の速さで抑うつ症状が悪化していた。これについて研究チームが調査の参加者と議論をしたところ、「ロンドンの若者は若い頃から大人としての役割や責任を引き受けることが多く、社会でのジェンダー・ギャップをより早い時期から経験している」といった見方が示唆された。
これらの結果を受け研究チームは、「ジェンダー・ギャップは社会的な文脈で左右される」として、社会構造などの環境要因を変えることで男女格差の拡大を「予防できる可能性がある」と分析している。
研究結果は同日、英医学誌『ランセット』に掲載された。