2023年度の全国の児童相談所における児童虐待相談の対応件数は、前年度と比べて1万666件増加(5.0%増)し、22万5509件だったことが3月25日、厚労省の発表で分かった。公表している統計では過去最多となる。相談の種別では「心理的虐待」が13万4948件と最も多く、虐待をした人は「実母」が48.7%と最も多かった。三原じゅん子こども政策担当相は同日、記者団に対し「非常に重く受け止めている。孤立した状態で子育ての困難に向き合わざるを得ない家庭が多くなっていることが考えられる。こども家庭支援センターの設置や、児童相談所の体制強化を進めていく」と述べた。
相談の種別では、「心理的虐待」が13万4948件で59.8%を占めた。その他、「身体的虐待」が5万1623件(22.9%)、「保護の怠慢・拒否(ネグレクト)」が3万6465件(16.2%)、「性的虐待」が2473件(1.1%)と続いた。
虐待をした人は、実母が48.7%と最も多く、次いで「実父」が42.3%、「実父以外の父親」が5.0%、「実母以外の母親」が0.4%、「その他」が3.6%だった。
年齢別では3歳児が最も多く、年齢が上がるごとに「身体的虐待」の割合が増えていくことは、前年度と同様の傾向だった。
三原担当相は児童虐待相談の対応件数の増加の背景について「核家族化や地域関係の希薄化などによって、孤立した状況で子育ての困難に向き合わざるを得ない家庭が多くなってきていることが考えられる」と述べ、「こうした状況に対応するには、まず児童相談所における体制の強化が重要だ。児童福祉司の増員を図るとともに、児童相談所の職員の定着支援のためにメンタルヘルスケアなどの取り組みも強化していく」と強調した。
また、近年、心理的虐待の相談件数が増えていることについて「配偶者への暴力を目撃するなどのいわゆる面前DVの増加が要因の一つと考えている。これは子どもを深く傷つける行為であり、決して許されるものではない」と強調。「こども家庭センターや児童相談所は、子育ての悩みだけではなく、家庭の悩みも受け止め、必要な支援を行っていくので、相談してほしい」と呼び掛けた。