学習指導要領改訂に期待する前に、できることがある(庄子寛之)

学習指導要領改訂に期待する前に、できることがある(庄子寛之)
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自分の学校の余剰授業時数を知っているか

 2024年度が終わる。皆さんにとってどんな1年だっただろうか。

 春休みは要録の点検や来年度に向けた準備などがあるため、休む時間も少ないかもしれない。しかし、こうした節目ではしっかりリフレッシュして、新年度へ向かっていただきたい。

 さて、学習指導要領改訂の話が始まっている。改訂に期待する声や、要望する声が飛び交っているが、改訂を待たずとも、できることはないのか考えていきたい。

 例えば、授業時数の削減である。標準授業時数については、現場ではどうすることもできない。しかし、授業時数の余剰をできる限り少なくすることはできる。

 ご自身の学校の来年度の授業時数は、標準授業時数に対してどれくらい余剰を残しているか、ご存じだろうか。知らない方は、しっかり調べてほしい。管理職と教務主任しか知らないという学校は危険だ。来年度の年間計画はすでに出ている。時数を確認してほしい。大きく余剰があるのであれば、年間を通して、どこのタイミングで6時間授業を5時間にできるか考えてほしい。そして、それを管理職や教務に提案すべきである。

 まだ間に合う。もちろん教育委員会の届け出はすでにされているが、学校単位でできることに関しては工夫できるはずだ。来年度の教職員みんなが喜ぶ授業カットはどこなのか、複数人で提案してみるのもよいかと思う。

 ただしその時、一生懸命考えてくれた教務主任を否定することだけはあってはならない。そこだけは気を付けるべきだ。

小学校の40分授業は今でもできる

 1授業あたりの時間数も話題になっている。小学校では40分授業、中学校では45分授業を求める声も聞かれるが、これも現行の制度でできる。小学校でいえば、1授業が9分の8時間になるだけである。

 そして、すでにそうしている学校がたくさんある。周りになければ、インターネットなどで調べて連絡してみてほしい。どうやって教育委員会に伝えて実施できたのか。教職員にはどのように説明したのか。きっと丁寧に教えてくれるはずだ。

 とはいえ、単独行動は危険である。管理職から管理職という連絡がベストではあるので、管理職が1授業時間を短縮したくない場合は、まずご自身の管理職を説得するところから始めるべきだ。

 1授業時間を5分短くしている小中学校に数多くお邪魔したが、どこでも高評価であった。特に小学校では、40分授業を午前中に5時間入れてしまうことには抵抗があったが、見てみると子どもたちも楽しそうに過ごしていた。検討の余地はありそうだ。

計画年休のススメ

 来年度も働き方改革を進めることは必須だ。さまざまな取り組みがあるが、たくさん見てきた中でもよいものの一つに、計画年休がある。

 1学期から始めるために、4月中に5月から7月に1日でも計画年休をする日を割り振るのはいかがだろうか。ただ取り入れるのではなく、全職員で対話すべきだろう。もちろんいきなり会議を入れればいいのではない。誰が反対しそうなのか。うまくいかないとしたらどういうことが想定されるか。ちゃんと考えてから対話の場をつくるとよい。

 外部の人に話してもらうのもよい。一気に話が進むと思う。平日、おのおのの教職員が公的に休めることができるようになった職場は強い。教職員の表情の明るさが違う。ぜひ試みていただきたい。

国のせいにせず、今できることを探す

 つい5年前まで、私がセミナーなどで「うちの学校は午後2時50分に6時間目が終わります」と話すと、たくさんの問い合わせが来た。「どうやったらできるのか」「うちもやりたい」と。あっという間に広がり、今では午後3時前に6時間目が終わる学校も多くなった。とはいえまだ一部である。

 地方では、スクールバスを待つ時間に指導していたり、兄姉の6時間目が終わるまで、低学年を担任が預かっていたりする姿もよく見る。本当に担任が見なくてはいけないのか。どうしても見なければいけないのであれば、一つのクラスに集めるなど、いろいろな工夫ができる。当たり前にしばられず、ぜひ行動に移してほしい。

 ここ2年、多くの学校に伴走してきた。伴走してきた学校は、変容の差こそあれ、どこの学校も在校等時間が減り、教師のやりがいは増えたと答えた。意識だけで働き方は変わる。今まで「やらなければいけない」「当たり前」と考えていたことはどんどん手放してほしい。

 文部科学省の方々も、必死に現場のことを考えて学習指導要領の改訂に取り組んでいる。自分の利益だけを考えている方には、私は一人も出会ったことがない。現場を考え、この国の教育がよりよくなるために全力を尽くしてくれている。私はそれを最大限応援しつつ、自分ができる全国の学校の支援をしていく所存である。忙しくて休む暇もない時期であると思うが、英気を養う春休みにしてもらいたい。

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