(提言)この先生なら!

(提言)この先生なら!
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弥富市教育委員会教育長 高山 典彦

 人間ドックに行った翌日、その病院から電話があった。忘れ物でもしたかな、と軽い気持ちで出ると、「昨日撮った肺のレントゲンに影が映っていたので、すぐに精密検査を受けてください」とのこと。それでも、生来の能天気の私は、「しばらく都合がつかないんですが」と答えた。すると、「できるだけ早く」と言われ、事の重大さに気づいた。

 翌日、何とか都合をつけて病院へ行った。受付を済ませ、すぐにレントゲンを撮り、そこから長い時間待った。

 ぎゅっと握っていた札の番号が呼ばれた。神妙な面持ちで診察室へ入ると、30代ほどの先生に「どうぞ、かけてください」と促され丸椅子に腰かけた。先生は、開口一番、「最近、風邪をひきましたか?」と尋ねた。私が、年末にインフルエンザにかかりその後もなかなか咳が止まらなかったことを伝えると、先生は、「それですね」と言われ、「きっとその時に、気管支肺炎になっていたのだと思います。そのために肺の一部がこのように影になって映ったのだと思います」と説明してくださった。

 その後、聴診器を当てて呼吸音を聴いている先生を見ながら、「すごいな。一枚のレントゲン写真と画像、そして簡単な問診で原因を突き止めるとは」と感心するとともに、「学校の先生たちは、子どもの様子を見たり声をかけたりする中で、その子の見立てをこれほどまで的確にできているだろうか」と考えた。もちろん、すべて医師一人で行ったわけではない。レントゲン技師、受付係、看護師など、診察を行うまでに多くの専門職が関わり、分業されている。しかし、それは教育の分野も同じで、以前より多くの専門性の高い方やサポートする支援員さんが関わってくださっている。そうであれば、それにより生み出された時間を研修に充て、医師と同じように、「子どもを見る」(診断)「個に応じた学びを提供する」(処方)ことができるはずである。

 そんな先生に出会えた時、子どもも保護者もきっと、「この先生なら!」と思うだろう、あの日の私のように。

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