先日、研修を終えた先生方が講堂から次々と出てくる様子を、研究室の窓越しに見ていました。よほど会話が弾むようで、5分経っても10分経ってもその場から離れようとしない姿が印象的でした。
教育センターでは、グループ協議などに重点を置き、研修後も新たなネットワークで学びを継続できるように心掛けています。今後は、悉皆研修だけでなく、自ら進んで学びの場に飛び込み、新たな仲間と切磋琢磨する姿を期待しています。
ここからは、研修の講義で話したことや、私が経験した中で大切に思うことをお伝えします。
現在、「子ども中心の学び」の実現に向け、多くの学校が授業を公開しています。私が若い頃は、他校の授業を参観する機会は多くありませんでした。当時は、レベルの高い授業を見ても、参考にならないと勝手に思い込んでいました。忙しいことを言い訳にしたこともあり、せっかくのチャンスを無駄にしていました。
ある日、名古屋市教育研究員の公開授業を参観した先生が学校に戻ってくるなり「一流の授業は違う!」「もう、二度と見ることはできない。本当に参観してよかった。よい授業に出会うと自然に授業センスが磨かれていく」と、うれしそうに話をする姿が印象的でした。
それ以降、私は言い訳をせず、チャンスを逃すことがないように、校外で学びの機会に参加することが増えたと思います。一流の授業からよいものを吸収して、自分なりにアレンジして実践してみることにより、今までと違った子どもの反応が得られました。自分の考えだけに固執することなく、広い視野で授業力を高めてほしいと思います。
どの学校にも、指導力があり人間としても尊敬できる先輩教師は必ずいます。若い頃、多くのすてきな先輩方に囲まれて仕事をすることができました。日頃の授業や生徒指導のアドバイスはもちろんのこと、困っている自分に何時間も付き合っていただき、学習指導案を完成させることができたことを思い出します。
また、先輩方は、成功体験だけでなく、日々の授業での失敗や保護者との関わりで得られた貴重な財産を、惜しみなく分け与えてくれました。先輩方を意識して観察すると、教育書には書かれていない優れたノウハウがたくさん見つかりました。
先輩から学ぶことは、これから先もずっと続きます。新たな先輩に出会ったときこそ、感謝の気持ち、謙虚に学ぶ気持ちをいつまでももち続けて欲しいと思います。
自ら苦しい方向に進むことはなかなかできることではありません。明るい未来が保障されていれば別ですが、そんな容易なものでもありません。可能性を信じて一歩を踏み出そうとすることはありますが、なかなか前に進まないのが現実ではないでしょうか。そんなとき、先輩や同僚が背中を押してくれることがあります。そこが、大きな分岐点です。
先輩や同僚の後押しをチャンスとして捉えることにより、一回り大きな人間になれる可能性を秘めています。教師力を高めていくには、研究と修養しかありません。
現在の自分自身に語り掛けてみましょう。そして、教師としての力を磨き、高めていくための、更なる一歩を踏み出してみましょう。
皆さんは「先生」と呼ばれる職業を選んだのですから。
(髙岸宏幸・名古屋市教育センター研修部長)