管理職研修「審査論文をどう書くか」(123)

管理職研修「審査論文をどう書くか」(123)
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論文テーマ

 学校の教育力を高めていくには、まず管理職が自校の現状と課題を客観的に分析し、教職員を組織としてより良く機能させることが必要です。現任校の教育課題に対するあなたの問題意識をあげ、課題を明らかにし、その課題解決のためにどのような目標設定をして取り組みを進めるか、現任校の実情をふまえながら具体的に述べなさい。

テーマの分析・解説

 「自校の現状と課題を客観的に分析」という、自校を見つめ、課題を設定するところからの論文であるため、教頭としての組織を客観視する視野の広さが求められる。現任校の教育課題を選択するため、受審前に重要度の高い課題を取り上げ、その課題の解決方法を準備しておく必要がある。論文の実現性をもたせるためにも、現任校で取り組んでいる課題があれば、それを論述に加えることで具体性が増すだろう。ここでは、若手からベテランまでの教職員一人一人の授業力向上のための組織的な研修体制について模擬解答を例示する。

 

はじめに

 今年もわが校に2人の新任教員が配置された。ここ数年、毎年のように新任が配置され、若手教員が多くなっている。初任者研修については充実した研修が図られているが、初任者研修が終わる2年目以降の教員の研修はまだまだ十分でない。同時にベテラン教員の退職や勤務条件の変更などがあり、現場において若手から中堅教員の指導力、授業力をいかに高めるかは喫緊の課題となっている。

 本校の子供一人一人の学習状況はさまざまである。個々に応じたきめ細かな学習指導が求められる昨今、教員一人一人の力量を高めるために、組織で学習指導体制を構築する研修が必要であろう。教員にとって、授業力は学校の根幹であり、学び、高め合う組織的な取り組みが必要である。そこで、教頭として、校長に指導助言を仰ぎながら、以下の2つの視点から課題解決に取り組んでいく。

授業をつくる、授業力を高め合う環境づくり

 目の前の子供に合わせた授業づくりは、教員にとっては必須の課題である。日々、自分の授業を客観的に見直し、授業改善につなげる努力が必要である。学校体制でそれら意識を高めるため、教員一人一人の授業研究の機会を大切にする。教頭として、教務主任や研究主任に指示を出し、授業研究を推進する。研究主題の共通理解を図り、主題に適する部会を編成し、若手からベテランがいっしょになって授業を考える機会を設定する。一年間に行える全校体制の授業研究は限られるが、小集団の部会やペアをつくることで、日常の授業研究は実施可能である。また、時間割編成において、ティームティーチングの組み合わせを行うことで、授業でかかわり合うことができる。小学校では空き時間が少ないが、教職員の適正な配置と時間割編成により、時間割内の時間を生み出す。

 通期の明確な授業時間数を示し、計画的に授業準備、授業づくりの時間や場を設定する。昨今、小学校の部活動も削減され、少しではあるが授業後の時間を有効に利用できる。すべての教職員が授業づくりで研究できる環境をつくっていく。とくに、若手が授業をつくることを楽しむ教師となるよう育っていくことを願う。

教員一人一人の主体性を引き出し、教員の学ぶ意識を高める対話

 教頭は、職員室の担任といわれ、教職員一人一人の取り組みの様子に敏感でなくてはならない。日常的な会話や声掛け、対話の時間を大切にしたい。その中の一つに、形式的ではあるが教員評価シートをもとにした相談の機会がある。教職員自らが立てた目標が書かれた教員評価シートの活用は有効である。定期の機会だけでなく、日々、進捗状況を見守り、声掛けする。日常のコミュニケーションの中で、励ましやアドバイスを大切にする。評価シートを元に話し合う機会は、教職員一人一人と相談できる絶好の機会である。

 どんな指導をしてどんな授業をつくりたいのか。さらには、学校の中でどんな活躍をしたいのか、教職員一人一人の主体性を引き出す対話をする。その際、愛知県教員育成指標を参考に、目指す教師像について話し合う。同時に研修記録簿についても教員との相談を行う。教員免許更新制度がなくなった現在、教職員自らが研修計画を立て研修を積むことは必須である。教職員の年齢や経験、個々の事情に寄り添った研修の計画を立てさせる。

 日々、たくさんの教育資料が学校に送られてくる。その中には有益な情報がたくさんある。しかし、それらに目を通す時間がない教員が多い。日常は本当に慌ただしい。そこで、特に必要な他校の実践や教育にまつわる情報を教頭がまとめて発信する。重要な箇所に付箋やマーカーを入れるだけでもよい。教頭として教職員一人一人の学びと成長を支える地道な取り組みをしていく。

おわりに

 社会の価値観が変化することで、変わり続ける教育現場。時代に合わせるためには、教員一人一人が継続的に学ぶ必要がある。働き方改革の課題を乗り越え、教員は「絶えず研究と修養に努める」専門職である。子供たちの主体的な学びを引き出すためには、われわれ教員自身の学びも主体的でなくてはならない。私は教頭として、校長の指導を仰ぎながら、活力に満ちた教師と子供たちの笑顔あふれる学校づくりのために、全力を尽くす所存である。

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