【新年度にやっておきたい校内研修②】学級開きノウハウシェア

【新年度にやっておきたい校内研修②】学級開きノウハウシェア
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 いよいよ来週は全国各地の学校で始業式や入学式が行われる。子どもたちとの出会いである「学級開き」や「授業開き」に、緊張している教員もいるのではないだろうか。そこで、全国の学校で校内研修の講師を務める㈱先生の幸せ研究所の大野大輔氏が、新年度にお勧めするのが「学級開き・授業開きのノウハウシェア研修」だ。その具体的な5つのステップについて聞いた。

「学級開き」についてみんなで考える

――新年度、学級開きや授業開きについて、いろいろと頭を悩ませている教員も多いのではないでしょうか。

 学級開きや授業開きは、先生たちにとっても大事な時間なので、必ず皆さん考えていると思います。

 複数の目で子どもたちを見るチーム担任制や学年担任制を導入している学校は、チームで学年運営するので話し合う必然性がありますが、学級担任制の場合、学級開きは個人の裁量に委ねられているが故に、個業化されています。皆さん一人で、教室などでリハーサルしたり、学級開きの本を読んだりして挑むことが多いのではないでしょうか。

 もちろんそれでもいいのですが、学級開きや授業開きについてみんなで考える校内研修をお勧めします。校内の先生方の学級開きや授業開きのノウハウがシェアされますし、それぞれが学び合える関係になっていくことにもつながります。

――みんなで学び合った方がより良いものになるのでしょうか。

 本にも使えるテクニックなどはたくさんありますが、同じ学校にいる先生たちのノウハウは、生きたノウハウです。

 例えば、30人先生がいる学校だったら、30人分のこれまでの経験やノウハウがあります。それをシェアできるのは、非常に有効だと思いませんか。実は、ベテランの先生でも、他の人の学級開きや授業開きを見られる機会は、めったにないんです。

 ただでさえ忙しい年度初めですし、「そんな時間をとるのはもったいない」「自分の学級開きの準備をしたい」という後ろ向きの声が出たりするかもしれません。でも、一度やったら「毎年やりたい!」という学校が多いので、ぜひやってみてください。

まず、良い学級の理想像のすり合わせから

――具体的にはどうすればいいのでしょうか。

 5つのステップで、校内研修を進めると良いと思います。

 まず、ステップ①として、学級開きや授業開きをするにあたって、不安なことや知りたいことを付箋などに書いて、出し合ってみましょう。

 ステップ②で、「そもそも学級経営で目指したい姿は何?=ビジョン」という良い学級の理想像をみんなですり合わせます。どういう学級が「良い学級」と思っているかは、先生ごとにばらつきがあるからです。

 例えば「先生の言うことが聞けるクラス」がいいのか、「自分たちで解決できたり、学び合えたりするクラス」がいいのか。理想の状態を考えることで、具体(行動指針)が見えてきます。

学級のビジョンを考えた一例。ビジョンが定まることで行動指針が見えてくる=大野氏提供
学級のビジョンを考えた一例。ビジョンが定まることで行動指針が見えてくる=大野氏提供

 この理想の状態については、一つの言葉にならなくても大丈夫です。なんとなくみんなの中に一貫した思いがあればいいと思います。対話をすることで、一人一人の先生の中に「こういう学級を目指そう」という軸ができていきます。

 ステップ③で、いよいよノウハウシェアです。これまでやったことがある、見たことがある、知っているなど、自分が学級開きや授業開きで、やって良かったことなどをシェアします。

 小学校ならば低学年、中学年、高学年で分かれて、中学校であれば教科や学年で分かれて、ノウハウを付箋に書いて出していきます。もちろん、ICTを使ってもできます。名前を書くこと、具体的に書くことがポイントです。

 そして、その付箋を壁や机などに貼り、お菓子を片手にギャラリーウォークをします。「これ面白そうだね」「どうやってやるんですか?」と、学び合いが生まれます。

 ステップ④では、それを基に自分が「どんなことをするか」を選んで、簡単でいいので、自分でデザインしてみる時間をとります。

 最後のステップ⑤で、自分がデザインしたものを、他の人に共有します。お互い質問し合ってみてください。私はここがとても大事なステップだと思っています。その上で、最後に個人で再度、デザインしてみてください。

学級開きだけでなく、他のトピックでもノウハウシェア研修は有効

「こうした校内研修をするための創造的な余白をつくってほしい」と大野氏=撮影:松井聡美
「こうした校内研修をするための創造的な余白をつくってほしい」と大野氏=撮影:松井聡美

――この校内研修は、どのぐらいの時間が必要ですか。

 私が校内研修の講師をするときは、だいたい90分ぐらいでやることが多いです。一番短い時は40分でやったこともあります。

 短い時間しか取れないようであれば、研修を午前中の時間に設定すれば、時間が足りなければ、皆さんランチタイムに続きをやり始めると思いますよ。

 途中で終わっても良いのですが、できれば最後のステップまでやり切れると、学級開きや授業開きに自信が持てます。ここは管理職の腕の見せ所で、この校内研修をするための創造的余白を、ぜひつくってほしいと思います。

 また、このノウハウシェア研修は、学級開きや授業開きに限らず、ルールづくりや、子どもたちへの声掛け、掃除など、さまざまなトピックで応用できます。

 先生は職人気質の方が多いので、普段はあまり自分が持っているノウハウを出したりしません。それを共有できるのが、ノウハウシェア研修です。4月以降も、ぜひトピックごとにやってみてください。

 そして、できればしばらくしてから振り返りの機会もつくってみてください。特に、学級運営では必ず問題が起きてきます。学年単位など、少ない人数でも良いので「スタートしてみてどう?」と対話する時間が設けられるとベストです。それが先生の仕事を「個業」から「協業」にしていくことにもつながります。

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