給特法巡る論戦前に院内集会 弁護士「改正案は賃金不払い法案」

給特法巡る論戦前に院内集会 弁護士「改正案は賃金不払い法案」
給特法改正法案の問題点を指摘する岩崎弁護士(右から2人目)=撮影:山田博史
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 教員の処遇改善に向けた給特法改正案を巡る論戦が国会で始まるのを前に、学校現場の実態や改正案の問題点を訴える日本教職員組合(日教組)主催の集会が4月8日、参議院議員会館でオンラインを併用して開かれた。登壇した弁護士は、教員に支払う教職調整額を現行の4%から段階的に引き上げるとする給特法改正案について、「4%から10%にする必要があると言いながら毎年1%ずつしか上げず、後払いもしないのは違法な状態を認めることであり、私は『賃金不払い法案』だと思っている」などと強調。段階的な引き上げを記した部分は削除すべきなどと、集会に参加した国会議員らに訴えた。

 この集会は、日教組が、学校現場の実態を伝える「『今、学校が大ピンチ!』現場の声を届けよう! キャンペーン」の一環としてシリーズで開いており、今回が3回目。この日は給特法改正案を巡る問題とともに、高校無償化をテーマに弁護士や各地の教職員組合代表らが現場の実態や意見を述べた。

 この中で教育法などに詳しい岩崎政孝弁護士が、給特法改正案の問題点を指摘した。はじめに岩崎弁護士は教職員の勤務実態調査で過重な長時間労働が明らかになっている上、専門労働に見合わない過少な給与になっていると指摘し、教職調整額の引き上げについて、「4%から10%に引き上げる必要があると言いながら1%ずつしか上げず、5年間はただ働きとは民間企業なら労基署から指導を受ける状況だ。端的に言えば『賃金不払い法案』だと思っている」と批判した。

 その上で「教職員がワークライフバランスを守られて働ける状態でないと、子どもたちが不幸になる」と話し、具体的な提言として、教職調整額の段階的な引き上げを記した部分を法案から削除するとともに、次期国会以降、労働基準法の下で適正な時間外勤務手当が支給されるようにすることや、教員の持ち授業時数を減らして重要な時間を確保できるように取り組んでほしいと要望した。

標準授業時数削減へ「学習指導要領」の見直しを

 続いて登壇した北海道教職員組合の佐野和孝書記長は、道内で実施した勤務実態調査の結果に触れ、教員が授業準備などに対応できる時間は、所定勤務時間内では25分しかなく、構造上の問題があると指摘し、「持ち授業時間数の削減が必要だ」と訴えた。

 また、2011年度以降、学習指導要領改訂とともに小中学校の標準授業時数や教科書のページ数が増え、不登校やいじめの件数も増加している傾向があるとのデータを示し、「因果関係を証明するものではないが、授業についていけず、学校が楽しくないという子どもを増やしているのではないか」と問題提起。その上で「子どもたちと教職員双方の負担を軽減するため、現行の指導要領を抜本的に見直すべきで、標準授業時数の削減が必要だと思う」と強調した。

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