紛争地で学校施設への攻撃が相次ぐ中、国際NGOのセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンはこのほど、学校施設の軍事利用や意図的破壊の禁止を求める国際的な指針「学校保護宣言」への、日本政府の賛同を求める署名キャンペーンを始めた。2015年に策定された「学校保護宣言」には、紛争当事国を含む世界121カ国が賛同しているが、日本政府はG7の中で唯一賛同していない。
学校施設は広く頑丈で、複数の部屋や校庭があり、水道設備などもあることから、ひとたび紛争になれば軍事目的で利用されやすいため、本来は民間施設として保護されなければならないにもかかわらず、攻撃対象にされるケースがある。
そこで学校保護宣言(Safe Schools Declaration)では▽軍事利用を目的に開校中の学校を使用することの禁止▽民間人が退去後の学校の使用は、最終手段の場合のみとすること▽紛争下における学校の意図的破壊の禁止▽敵が軍事目的で使用している学校へ攻撃をする際は、事前警告をするなどの代替手段の検討の義務付け▽戦闘部隊による学校警備の原則禁止――などを賛同国に求めている。
学校保護宣言は、セーブ・ザ・チルドレンをはじめ、国連児童基金(ユニセフ)や国連教育科学文化機関(ユネスコ)なども加わっている「教育を攻撃から守る世界連合」がいくつかの政府と連携して、多様な関係者とのヒアリングを経て15年に策定された。法的拘束力は伴わないものの、賛同した国では法律の整備や政府内の協力、軍関係者の研修などが進むといった成果も出ている。
学校保護宣言は現在までに121カ国が賛同し、今年1月には米国も賛同したが、日本政府は宣言そのものには一定の評価をしているものの、国内法の整備の観点などから慎重な姿勢を取っており、賛同していない。
日本政府の賛同を求めるキャンペーンでは、子どもや学校・教育関係者、一般市民などに向けて、オンライン署名サイト「Change.org」やセーブ・ザ・チルドレンの特設ウェブサイト「あすのコンパス」で署名を呼び掛けている。18歳未満が署名をする場合は、原則として保護者の同意を得た上で、「あすのコンパス」から行う。
キャンペーンは4~6月を第1期とし、状況に応じて最長で12月まで延長していく方針で、署名はキャンペーン期間中に外務省や防衛省、人道支援・国際政策に関わる議員連盟などに提出される予定。