気候変動が進むと2060~80年代には、これまで通りの運動部活動は困難になる――。国立環境研究所と早稲田大学の研究グループはこのほど、将来の気候変動による学校の運動部活動への影響などについてまとめた調査研究成果を公表した。温室効果ガスの抑制対策が進まない場合は早朝練習の導入など一定の対策では不十分だと予測し、「屋内運動場の整備など、抜本的な対策も重要になる」と警鐘を鳴らしている。
同研究グループは、気候変動で将来の高温傾向が予測される一方、数百万人もの児童生徒が参加する運動部活動への影響に着目した研究がほとんどなかったことから、今後の気候変動に伴う暑さ指数(WBGT)の予測を基に、運動部活動への影響や対策の効果を分析した。
同グループは、国内842都市の過去12年間分の気象データなどから暑さ指数の予測モデルをつくり、部活動が行われる放課後の時間帯に暑さ指数が「暑熱レベル2(活動中に全ての運動を中止する値に達する」や「暑熱レベル1(活動中に激しい運動を中止する値に達する)」になる状況について、全国を8地域に区分して調査分析した。
また、暑熱対策として▽「早朝(午前7~9時)を屋外活動の時間枠に追加」▽「週のうち暑い2日分を空調の効く屋内活動に変更」▽上記の両方を実施――を取った場合の効果についても分析した。
その結果、2060~80年代に温室効果ガス抑制の対策が進まなかった場合、8地域中6地域が「暑熱レベル1」に達し、さらに4地域は「暑熱レベル2」に達すると予測されることが分かった。活動制限が必要な間は8地域でのべ年間19カ月に及ぶといい、研究グループは「特に温暖な地域では、年間スケジュールの大幅な変更が必要となる可能性がある」と指摘する。
また、対策の効果については、早朝練習導入と週のうち暑い2日分を空調の効く屋内に変更することを組み合わせた場合、「暑熱レベル1」は4地域、「暑熱レベル2」は0地域に減ると予測された。同グループは「気候変動が進行するシナリオでも効果があると予測されたが、温暖な地域を中心に激しい運動が制限されるため、今回想定した対策だけではこれまで通りの運動部活動を継続することは難しくなると考えられる」と分析している。
こうした研究成果を踏まえて、国立環境研究所の大山剛弘研究員は「現状は将来に比べればリスクは低いが、年間数千人の生徒が熱中症になっていることを考えると、体育館のエアコン設置も進んでいるので、学校現場では屋外活動の頻度を下げたり、体育祭を夏場から外したりする対応も積極的に考えてほしい。今回は部活動に限定して調べたが、今後は体育の授業や体育祭など幅を広げて、学校スケジュールの在り方に関する研究を進めていきたい」と話している。