全国学力・学習状況調査のうち、小学6年生の国語、算数、理科、中学3年生の国語と数学、理科の4日目が4月17日に行われた。2022年度以来3年ぶりの理科は、中学校で初めてCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)が導入され、同14~17日に分散して実施された。中学校理科は同18日以降、自宅など学校外からオンラインで参加することができ、文部科学省では不登校や長期欠席の生徒の実態把握につながると期待を寄せる。
同調査は学力調査と児童生徒、学校への質問紙調査などで構成される。
文科省によると、同17日午後2時時点で、中学校理科のCBTを含め学力調査に関して大きなトラブルなどは報告されていないという。
同調査は悉皆(しっかい)で、国立、私立も含め小中学校の97.6%が参加を予定しているが、学校行事などの都合で同17日に実施しなかった学校は、同30日までに実施される。
中学校理科は同18日以降、オンラインで学校外からも実施でき、院内学級や教育支援センター、自宅などから、長期療養中や不登校の生徒も参加可能になっている。
文科省の相原康人学力調査室長は「今回、後日実施になるがインターネット環境さえあれば誰でも参加可能だということを周知して、それぞれの状態に応じて参加できる生徒に参加してもらえることを期待する。その上で、参加した生徒の学習の課題をフィードバックして、今の学びに生かしていってほしい」と強調する。
中学校理科は文科省のCBTシステム「MEXCBT(メクビット)」に問題が配信され、生徒は学習者用端末から解答した。問題は経年比較を可能とするため、IRT(項目反応理論)に基づいている。IRTでは問題は原則として非公開となるが、今回の全国学力調査の中学校理科では、公開問題と非公開問題を組み合わせた構成で出題された。
公開問題には全日程に共通する問題が6問、実施日別の問題が16問用意され、その中から実施日ごとに4問が出された。同じ調査日に実施する生徒は同じ公開問題のセットを解く。公開問題の中には、CBTの良さを生かして動画を組み込んだ問題などもあった。
これに対し非公開問題は、幅広い内容・難易度の問題が16問出題されるが、生徒によって解く問題は異なる。
また、学習状況などを尋ねる質問紙調査は、中学校は理科と同じ日にMEXCBTを活用して、小学校は4月18~30日までの間の指定された日にオンラインで回答する。中学校の生徒質問紙調査はMEXCBTの機能を生かして、今回試行的に一部の項目をランダム方式とし、回答の負担を軽減する。
昨年12月に結果が公表された23年実施のTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)で、算数・数学、理科について、勉強が楽しいと思う割合は男子の方が女子より高いジェンダーギャップがみられたため、質問紙調査の項目でも各教科の得意・苦手に関する意識や興味・関心などを尋ね、男女間で差が出るかを分析する。
これ以外に、初めての取り組みとして調査実施後に学校に対する追加的なアンケートを行い、長期欠席者や特別な支援を必要とする児童生徒、外国につながる児童生徒などに関する実態も把握する。
結果は7月14日には正答率とバンド分布などの全国平均が、7月末には全国データに基づく分析結果が、8月以降には都道府県・政令市別データが順次公表される予定。中学校理科はIRTの特性上、算出されたスコアと5段階のバンドで示される。
全国学力調査は来年度の中学校英語もCBTで行われ、27年度には小学校も含めて全ての教科がCBTに移行する。
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全国学力・学習状況調査 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の検証や授業改善などに役立てることを目的に、実施される悉皆(しっかい)調査。小学6年生の国語と算数、中学3年生の国語と数学が毎年出題されるほか、3年に1回程度の頻度で理科や英語も出題される。学習状況を聞く質問紙調査もある。
MEXCBT(メクビット) GIGAスクール構想に伴い、文部科学省が開発した公的なCBTのプラットフォームで、2021年から全国の小、中、高校で運用が始まった。国や自治体などの公的機関が作成した膨大な問題を活用でき、普段の授業や家庭学習のほか、学力調査などで利用されている。