男性育休の取得 「属人化解消」「組織としてバックアップ」で推進

男性育休の取得 「属人化解消」「組織としてバックアップ」で推進
各社の子育て支援の取り組みを紹介したパネルディスカッション=撮影:水野拓昌
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 改善の兆しが見えない少子化の進行が経済活動や日本社会に危機をもたらすとして、仕事と子育てを両立するための働き方改革や企業が取り組む子育て支援策をテーマに、日本経済団体連合会(経団連)は、東京都千代田区の経団連会館で「こどもまんなかセミナー」を4月16日に開催した。そこでは男性の育児休業取得促進など、子育てしやすい環境整備に取り組む企業の事例が紹介された。

 同セミナーのパネルディスカッションでは企業による事例紹介があり、積水ハウス、清水建設、東京海上日動火災保険、日本生命保険の担当者が登壇。積水ハウスは、2019年2月の本格運用以降、25年3月時点で取得期限を迎えた男性社員の育児休業1カ月取得率が100%になっているとアピール。「育休中や育休後の役割分担を話し合うための家族ミーティングシートが社員のパートナーに好評」といい、職場環境では属人化解消や助け合いの風土醸成といった効果があったという。また、社会に向けた取り組みとして、9月19日を「育休を考える日」とし、「男性育休白書」を発行したり、フォーラムを開催したりしている。

 清水建設は男性社員の比率が8割で、当初、育児休業取得率は低かったが、20年度以降は上昇し、23年度は85%に達したという。子どもの誕生から8週間のうち4週間まで有給休暇が取得できるパタニティ休業制度や、育児とキャリアの面談のルール化、ベビーシッター補助などの制度を紹介。「組織としてバックアップする仕組みを整えたことで取得率が伸びた」という。従業員と家族のつながりでは8月に「家族の日」を開いており、職場体験などが夏休み中の小学生らに人気だ。また、今年3月には男性向け子育てワークショップも初開催した。

 東京海上日動は、「仕事とライフの両立」というキーワードを掲げ、「一人一人のライフイベントの違いによって無用な心理的分断を生み出してはいけない。育児だけにフォーカスするのではなく、仕事とライフの両立の一つとして位置付けている」と強調。職場風土といったソフト面の整備にも力を入れ、部長らマネジメント層が定時勤務などを2週間トライアルする「もしもチャレンジ」を24年度から実施しているという。子どもの急病で保育所から送り迎えの要請を受けるといったハプニングも設定され、子育て世代への理解を広げている。また、仕事とライフの両立の支援として、オフィスツアーなどで保護者の仕事を学ぶ小学生向け「キッズプログラム」を冬休み期間の12月に開催している。

 日本生命は、社外に向けた保育分野の取り組みを紹介。今年3月には保育関連企業6社による合同プロジェクト「保育イノベーションコンソーシアム」発足に参加。単独の保育事業者では解決が難しい課題に対し、それぞれの知見や強みを生かすとして、ITインフラ構築による業務効率化▽共同調達スキームなどによる保育事業者の経営安定化▽潜在保育士の掘り起しやマッチング、人材不足の解消▽現場の声を取りまとめ、こども家庭庁への改善要望――といった取り組みを進める。また、企業主導型保育所でニチイ学館の全国展開をサポートし、活用を進める仲介事業も展開。子育てしやすい社会を目指すペンギンプロジェクトでも企業、NPO法人、自治体と連携している。

 ディスカッションでは「経営トップの発信が力になった」「マネジメント層の理解に苦労があり、工夫をした」という意見が複数社からあり、このほか、「育休取得者が事例を共有することも大切」といった声も挙がった。

 セミナーでは他に、こども家庭庁の渡辺由美子長官による政策説明や有識者・当事者による講演があった。NPO法人ファザーリング・ジャパンの塚越学副代表理事は、ワンオペ育児ではなく「共育て」、父親の育児参加の重要性を強調。こども家庭庁の「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」に参加している一般社団法人アンカーの小林真緒子共同代表理事は若者の視点から「ライフプランの価値観の世代間ギャップを埋めていく対話が必要」と訴えた。

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