外国籍教員は主務教諭の対象外 教諭としての任用訴える

外国籍教員は主務教諭の対象外 教諭としての任用訴える
緊急声明の趣旨を説明する中島さん=撮影:藤井孝良
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 現在、国会で審議されている給特法などの改正案で創設される「主務教諭」について、外国籍で「教諭」ではない教員は対象になっていないとして、外国籍教員への差別解消に取り組む関係団体が4月28日、東京都千代田区の衆院第二議員会館で院内集会を開いた。外国籍の教員は多くの自治体で「任用の期限を附さない常勤講師」として、教諭と変わらない勤務をしており、少なくとも全国に約500人はいるとみられている。集会で採択された声明では、主務教諭になる道を端から閉ざされていることは、処遇や昇進の機会を奪われるだけでなく、学校の運営上も弊害が大きいとし、全ての「任用の期限を附さない常勤講師」を教諭として任用するよう求めている。

 法案では、組織的な学校運営を進める目的で学校の教育活動に関して教職員間の総合的な調整を担う主務教諭を新たに置くことができるとし、給料表上でも教諭と主幹教諭の間に主務教諭の級を設けるとしている。

 外国籍教員は一部の自治体で「教諭」として採用されているケースもあるが、公務員には日本国籍が必要とする「公務員に関する当然の法理」の観点から、多くが「任用の期限を附さない常勤講師」とされている。この「任用の期限を附さない常勤講師」は外国籍の教員のみが対象で、待遇は教諭に準じているものの、現状でも主幹教諭や管理職にはなれないなどの制約がある。院内集会の主催団体によれば、こうした「任用の期限を附さない常勤講師」は、2024年時点で全国32都道府県13政令市で約500人に上るという。

 緊急声明では、教員の処遇改善を目的の一つにしている法案であるにもかかわらず、「任用の期限を附さない常勤講師」が蚊帳の外に置かれていると指摘。外国籍の教員である「任用の期限を附さない常勤講師」はいくら優秀であっても教諭ではないため、端から主務教諭の対象にされていないと批判する。

 その上で、「任用の期限を附さない常勤講師」の待遇面での差別的な状況は、さまざまな矛盾を抱えたまま長年放置されてきた問題だとし、当事者の教員としてのキャリアやモチベーションの問題だけでなく、学校の運営上の弊害としても解決すべきだと強調。「任用の期限を附さない常勤講師」をなくし、全員を教諭として任用すべきだと提言している。

 呼び掛け人の一人で元プール学院大学教授の中島智子さんは「外国籍教員が教諭以上の職へ昇進できないのは人権上の問題であり、教員組織における差別構造にこそ問題がある。問題の所在がマジョリティーに認識されていないことも、構造的な差別であることを表している」と説明。

 「主務教諭制度に賛成や反対ということではなく、今回の法案が教員の処遇改善を目的としているにもかかわらず、そこから完全に放置されている。外国籍教員の職の改善も含めて検討すべきであると訴える必要がある。これまで外国籍教員の問題はどのように訴えても周辺課題としか受け取られてこなかったが、教員全体に関わる法案が議論されるこの機会に、この問題の存在を訴える緊急の理由はここにある」と話す。

 集会ではビデオメッセージも含めて、当事者である外国籍教員もこの問題を訴えた。首都圏の公立中学校で「任用の期限を附さない常勤講師」として働く女性は「これは、日本で生まれ育った外国籍の教員だけの問題ではない。外国籍の子どもたちはもちろん、国籍に限らず、全ての子どもたちの未来の問題だ。多様な子どもたちの違いがプラスに生かされ、先生たちの違いも生かされることが、安心して過ごせる学校につながる。そのためにも、このような国籍条項がなくなることを願う」と述べた。

 

【キーワード】

主務教諭 学校の組織的・機動的なマネジメント体制の構築を目的に2024年8月の中教審答申を踏まえ、教諭と主幹教諭の間に設けられる予定の新たな職・級。学校内外との連携・調整や若手教員のサポートなどを中心的に担うことなどが想定されている。

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