給特法改正案が衆院文科委で可決 削減目標など附則で明記

給特法改正案が衆院文科委で可決 削減目標など附則で明記
給特法改正案の採決が行われた衆院文科委員会=衆議院インターネット審議中継より
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 公立学校の教員の処遇改善などを目的とした給特法改正案について審議していた衆院文部科学委員会は5月14日、時間外在校等時間を2029年度までに月平均30時間程度に縮減する目標を附則として加えた修正案の質疑を行い、賛成多数で可決した。これまでの質疑で懸念の声が上がっていた主務教諭の創設による教諭の給与の引き下げを行わないよう、自治体に周知徹底することなどを求める附帯決議も可決された。同15日の衆院本会議で可決され、参院に送られる見通し。

 改正案は、教員の処遇改善と働き方改革の推進、組織的な学校運営を一体的に実施していくため、給料月額の4%を支給している教職調整額について、毎年1%ずつ引き上げ、10%にするのをはじめ、教育委員会による教員の業務量管理・健康確保措置実施計画の策定・公表の義務付けや、教職員間の総合的な調整を担う主務教諭の創設などを定めている。

 この改正案に対し、自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主の与野党は、昨年12月に阿部俊子文科相と加藤勝信財務相との間で合意された、時間外在校等時間を29年度までに月平均30時間程度に削減する目標や、公立中学校の35人学級の実現を附則に明記する修正案を提出。

 この目標を実現するための措置として▽教員1人当たりの担当授業時数の削減▽教職員定数の標準の改定▽教員以外の学校の教育活動を支援する人材の増員▽不当な要求をする保護者などへの対応支援▽部活動の地域展開を円滑に進めるための財政的な援助――などを実施することを盛り込んでいた。

 この日の文科委員会では、修正案を含めた質疑が行われた。

 修正案について立憲民主党の津村啓介衆院議員は「教職員の働き方改革を、子どもたちの学びの場を健全な形にしていくという観点で進めていくには、おおむね3つのアプローチがあると思っている。1つは教職員の処遇改善、2つは少人数学級の実現など教職員定数の改善、そして3つ目は業務量の削減だ。今回の給特法(改正案)の本則はそのうちの1番、教職員の処遇改善では一定の前進があったが、2つ目、3つ目はさらに踏み込んだ内容が必要」と強調。

 「大臣合意において掲げられた、いわゆる1カ月時間外在校等時間の平均を30時間程度に縮減していく目標と、その実現のために必要な措置を法的拘束力のある形で明文化することを大きな主眼として今回の修正案を提出し、与野党合意を得た」と説明した。

 同じ立憲民主党の阿部祐美子衆院議員は、29年度までに時間外在校等時間を月平均30時間程度に縮減する目標が明記されたことについて、「極めて大きな成果であり、改正案が通れば学校の風景を変える可能性がある。その一歩になると期待している」と評価した上で「条文に恥じない実効性のある取り組みが必要であると考える。実効性の確保のためには具体的な方法と時間軸が必要であると思う。早急に国として工程表をつくり、各自治体が実行できるだけの予算を確保することが必要だ」と指摘した。

 これに対し阿部文科相は「今回の法案においては、全ての教育委員会が、文部科学大臣が定める指針に即して働き方改革をさらに進めるための計画を策定し、総合的な取り組みを実施していただくことになる。各教育委員会において、法改正に基づく対応を速やかに進めていただけるように、今後、今回の法案に関連した国における制度改正、予算措置の全体像を、その時期を含めて示し、それとともに国の取り組みを踏まえて各教育委員会が実施すべき取り組みについて分かりやすく示せるよう、検討していく」と答弁した。

 一方、反対の立場で質疑に立ったれいわ新選組の大石あきこ衆院議員は「もともとの給特法改正案は自公政権が出したものだが、(修正案は)それは変えずに前提として、附則を差し込むというものだ。これでは問題が全く解決しない。給特法改正の背景として、現在のすさまじい教育現場の人手不足と過労死問題が全く解決しないのが、政府の出してきた原案であり、修正案だ」と批判した。

 採決の結果、給特法改正案は修正案を加え、5党の賛成多数で可決された。

 合わせて▽時間外在校等時間を形式的に上限の範囲内とするために、週休日・休日を含めて実際の時間外在校等時間より短い時間を記録することがないようにする▽時間外在校等時間の上限時間を遵守することだけを目的に、自宅などへの持ち帰り業務を増加させてはならない▽主務教諭の配置のために、教諭の給与を引き下げることのないようにする――ことなどの周知を求める附帯決議も可決された。

 修正された改正案は同15日の衆院本会議で可決されるとみられ、議論は参院に場を移す。

 

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教職調整額 教職の勤務態様の特殊性を踏まえ、公立学校の教員に支給される。従来は給料月額の4%とされていたが、2024年12月に文部科学省と財務省が合意し、待遇改善を図るために段階的に10%まで引き上げる方針が決まった。

主務教諭 学校の組織的・機動的なマネジメント体制の構築を目的に2024年8月の中教審答申を踏まえ、教諭と主幹教諭の間に設けられる予定の新たな職・級。学校内外との連携・調整や若手教員のサポートなどを中心的に担うことなどが想定されている。

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