名古屋市教育委員会義務教育課長 畑生 理沙
社会や経済の先行きに対する不確実性や労働市場の流動性が高まる中で、自らの人生を「舵取り」する力を身に付けることの重要性は、かつてないほど高まっています。
本市では、学びの基本的な考えとして「ナゴヤ学びのコンパス」を策定し、ゆるやかな協働性の中で自律して学び続ける子どもを育むことを目指しています。昨年度からは、全ての市立学校園において、大人が子どもに伴走し、「子ども中心の学び」を進める学校づくりを推進しています。
また、全ての市立中・高校・特別支援学校にキャリアコンサルタントの資格を持つ人材を常勤で配置するとともに、キャリア教育推進センターを通じて、750を超える企業・団体などにキャリアタイムサポーターとして御協力いただきながら、キャリア教育を推進しています。出前授業などの本物のヒト・モノ・コトとの出あいを通じて、「好き」や「できる」を大切にしながら、多様な選択肢の中で、自分らしい生き方を実現する力を身に付けることを目指しています。
昨年12月には、中教審において、次期学習指導要領に向けた議論がスタートしました。中教審では、多様性を包摂し、一人一人の意欲を高め、可能性を開花させる教育の実現が喫緊の課題として議論されており、各学校や教育委員会の創意工夫を最大限引き出し、子ども一人一人の可能性が輝く柔軟な教育課程のあり方について、具体的に検討されています。
私は、子どもたちの学びと同様、学校づくりや教育行政のあり方についても、教師や学校にその力があると信じ、尊重・対話・チャレンジを大切にしながら、教育委員会が伴走する姿を目指していきたいと思っています。そのためには、教師間で関係性の質を高めることはもちろん、保護者や地域の方々と信頼関係を構築することが、これまで以上に重要となります。
他方で、教師や学校は、保護者の価値観が多様化する中で、それを踏まえた要望・意見への対応が求められており、教育委員会による支援が必要となる場面が増えているのも事実です。学校や教育委員会が拠り所にしてきた教育制度やその解釈の積み重ねによって、保護者の感覚と齟齬を生じさせる場面も増えてきているように感じています。教育委員会としても、制度の趣旨に立ち戻って考え、学校の説明責任を支援していかなければならないと感じています。
激しい変化が止まることのない時代においては、子どもたち同様、学校や教師にも変化の中を「舵取り」しながら進んでいく力が求められます。教育委員会としても、「全ては子どもたちのために」という目標を学校と共有しながら、支援に努めていきたいと思います。