「本当の地震はいつ起こるか分からない。こういった〝いきなり〟訓練はこれからも続けたい(生徒)」「今回の訓練のような〝失敗経験値〟も大切だと思った(教員)」
これは、一月に実施した地震避難訓練を振り返った文章の一部である。
本校は校訓「ただしく つよく あたたかく」のもと、自らの人生を主体的に捉え、考え、行動する生徒の育成を目指し実践を進めている。地域の有志による「富貴中ファミリー会」は年に数回、学校環境を整備してくださる。また、「フラワースタッフ」の方々は、ご自身の時間を見つけ、心を込めて花壇の世話をしてくださっている。そういった方々の背中を見つめ、本校生徒には「自分も役立つことをしたい」と考える意識が育っている。
武豊町は、住民による自主防災組織の活動が盛んな地域である。本校では防災ボランティアの会の皆さまを講師としてお迎えし、毎年「防災教室」を開催している。防災の知識のみでなく、防災の大切さや心構えを伝えてくださる、貴重な機会となっている。
防災の意識を育んだ生徒の一部は、夏季休業中に開催される「武豊町防災リーダー養成講座」に進んで参加をしている。防災講義・体験実習や救命講習を受講し、防災リーダー養成講座と救命技能講習の修了証をいただく、という講座である。
そのように自らの意思で防災を学んだ生徒たちに、ぜひ主体的に学校防災に関わってもらおうと、従来の避難訓練を見直した。防災リーダー養成講座を修了した生徒(以下、防災リーダー)が「学校にはどのような避難訓練が必要か」と考え、実践することにしたのである。
生徒たちはこれまでの学びを生かして検討し、次のような訓練案を構築した。「地震はいつ起こるか分からない。予告なしの訓練をしよう」「先生たちにとってもいい訓練になるはず」「私たちの誰かが〝けが人〟になろう。要救助者への対応訓練も必要だ」
こうして、防災リーダーと防災担当教員しか知らないタイミングで「いきなり避難訓練」は行われた。いつもの避難経路が崩壊していて通れない、という設定に戸惑う生徒、点呼により避難できていない生徒がいることが分かり捜索に向かう教員。訓練の最後は防災リーダーによる次のような呼びかけで締めくくられた。
「避難に模範解答はありません。その時に見合った行動をとれるよう、訓練ではどんどん間違えてください。それが〝次はこうしよう〟につながります。これからも訓練を大切にしましょう」
防災リーダーは「次はどんな訓練をしようか」と早くも考えている。生徒会役員選挙では「学校防災の充実」を訴える立候補者も現れた。
学校の防災、学校の安全を考えることは、「自分たちの学校をどのような学校にしたいか」という問いにつながる。そしてそこには「なぜ自分たちは学ぶのか」に向き合う姿勢が芽吹いてくるはずだ。防災をきっかけに、学校生活、学校での学びを生徒自らのものにするための取り組みを充実させていきたい。
(文責・中村浩二校長)