「地域連携」カギに工業高校の魅力発信を 全国工業高校長協会

「地域連携」カギに工業高校の魅力発信を 全国工業高校長協会
工業高校の校長ら300人以上が参加し、地域連携の事例が報告された=撮影:山田博史
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 高い就職率や専門的な人材育成などを背景に近年、改めて注目されている工業高校。全国工業高等学校長協会の第76回総会・研究協議会が5月27日、東京都大田区で開かれ、全国から約320人の校長が参加した。研究協議会では、「地域との連携」をテーマに、地元の校長や都内の教育長などから、企業や校種を超えた地域連携の取り組みが報告された。同協会の守屋文俊理事長は取材に対し、「高校無償化の動きも進む中、工業高校の魅力を積極的に発信して生徒を増やす取り組みに力を入れたい」と語った。

 同協会には全国の工業系高校の校長582人が加入している。同日は総会に続いて研究協議会が開かれ、コミュニティ・スクールの取り組みをはじめ企業や校種を超えた都内の地域連携の事例などが報告された。

 地元の都立六郷工科高校の釼持利治統括校長は、「地域とともにある学校づくり」をテーマに事例を発表した。大田区は約3500の工場があるものづくりのまちとして知られ、同校は企業と連携してインターンシップなどを進める国内初の「デュアルシステム科」を設置。企業社長らも参加する「デュアル推進委員会」を設けて人材育成に努めている。また、区内の中小企業18社が対話型で生徒に企業を紹介する「マッチングセッション」も開催、「今年度は保護者にも参加してもらい、企業の良さを見ていただくことにした」と活動の幅を広げていることを説明した。

 さらに同校は外国籍の生徒も積極的に受け入れ、現在80人近くが在籍しているといい、「デュアル推進委員会では外国籍生徒の就労についても話している。外国籍生徒の進路指導や特別な支援が必要な生徒も増えているので、今後はインクルーシブ教育の推進に取り組みたい」と語った。

 東京都狛江市教委の柏原聖子教育長は「つながる学校 つなげる教育課程」をテーマに発表した。柏原教育長はまず、同市の過去の事例を紹介。食育推進モデル校の小学校で、ランチルームのテーブルといすが折り畳み式で危険だったことから、都立工業高校と材木店とが連携して、高校生と小学5、6年生で一緒にテーブル7台といす40脚をつくったという。

 それから20年を経て、学校に行きづらくなった生徒が過ごす適応指導教室で、足りなくなった机とイスをつくるため同じスキームで工科高校の生徒と共に取り組んだ。この経験を踏まえて柏原教育長は「コミュニティ・スクールが地域で一体となる取り組みとすれば、こちらは学校を核に、人と人が協働するスクール・コミュニティだと思う」と述べ、異校種間の交流を進めるために積極的にアクションを起こしていくことの大切さを語った。

 守屋理事長は取材に対し、「今回は地元企業との連携を進めなければいけないという視点をメインに進めた。高校無償化の動きもある中、工業高校の魅力を積極的に発信して生徒を増やす取り組みに力を入れたい。特に今は志の高い女子生徒も増えているので、『工業女子』を増やしていきたいと考えている。ただ、教員不足とともに更新が必要な施設設備も多いので、国にはそういった支援をお願いしていきたい」と話した。

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