単元をプロジェクト化 大阪市立長原小でカリキュラムデザイン講座

単元をプロジェクト化 大阪市立長原小でカリキュラムデザイン講座
「長原タイム」のプロジェクト化を検討した同校の教員=撮影:松井聡美
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 各教科の単元を「つなぐ」「いかす」「まとめる」で、プロジェクト化しよう――。大阪市立長原小学校でこのほど、㈱先生の幸せ研究所の組織開発コンサルタントの大野大輔氏を講師に迎えた「カリキュラムデザイン講座」が行われた。同校の教員に加え、関西圏の学校の教員ら、外部から25人ほどが参加。各教科の単元をプロジェクト化していくワークなどに取り組んだ。

プロジェクト化で、学びの全体像を明示する

 同校では生活時程を変更し、40分午前5時間制を導入している。それにより生み出された時間を活用し、午後は独自の「長原タイム」という教科横断的な学びや、探究的な学びに取り組む時間を確保している。

 昨年度は「長原タイム」を活用し、子どもたちが企画して地域や保護者も巻き込んだ「長原フェスティバル」を開催。子どもたちがピザ窯づくりにも挑戦し、地域の人たちに手作りのピザを振る舞ったピザパーティーも実施するなど、教科横断的な学びに取り組んできた。

 昨年度、同校に伴走してきた大野氏は「どうやったらピザ窯がうまく組めるのか、どうやったらうまく火が燃えるのか、どうやったらおいしいピザ生地ができるのか。子どもたちは失敗もしながら、本番ではとてもおいしいピザをつくっていた」と振り返り、「遊びに見えるものが、カリキュラムデザインをすることで学びになる」と話した。

 カリキュラムデザインを難しく感じる教員も多いが、大野氏は「高級フレンチではなく、おふくろの味でいい。おふくろの味とは、この地域でしかできない学びの実現だ」とアドバイス。

 学びの転換のためのステップとして、▽ステップ⓪「創造的余白の創出」▽ステップ①「単元でつくる授業づくりへの転換」▽ステップ②「個別最適な学びと協働的な学びの融合」▽ステップ③「カリキュラムマネジメント」▽ステップ④「おふくろの味」―― を示した。

 「子どもたちは、何をやらされるのか、何のためにやるのかなど、学びの全体像が見えないことに苦しんでいる」と大野氏。「カリキュラムデザインにより、学びをプロジェクト化することで、学びの全体像を明示することができる。それにより、子どもたちは主体的に学べるようになる」と強調した。

「カリキュラムデザインはおふくろの味でいい」と語る大野氏=撮影:松井聡美
「カリキュラムデザインはおふくろの味でいい」と語る大野氏=撮影:松井聡美

行事に向けて、算数・理科・国語などの単元をプロジェクト化

 続いて参加者全員で、国語の「敬語」の単元をプロジェクト化するには、どうすればいいのかを考えるミニワークに挑戦。

 参加者からは「いろいろな言語の敬語を調べてみる」「地域のおじいちゃん、おばあちゃんをゲストに呼ぶ」「修学旅行や職業体験などのアポ取りの時に入れる」「ニュースを見ながら敬語を考える」「地域交流などで活用する」「総理大臣に手紙を書いてみる」など、次々とアイデアが出てきていた。

 大野氏は「行事などに絡めて、敬語の単元をプロジェクト化することもできる。国語と行事で、重複してやる必要はない。プロジェクト化することで学びをスリム化し、子どもたちに時間を返していくということも意識してみてほしい」と投げ掛けた。

「プロジェクトマップ」にプロジェクト化できそうな単元を書き込んでいく=撮影:松井聡美
「プロジェクトマップ」にプロジェクト化できそうな単元を書き込んでいく=撮影:松井聡美

 ここから長原小学校の教員は、今年度の今後の「長原タイム」のプロジェクト化を各学年で検討し、時系列でプロジェクトマップに整理していった。

 例えば、学校の畑で育てている野菜を近隣の施設などで販売する「ちょこっとマーケット」を企画している3年生は、算数の「重さのたんいとはかり方」、理科の「ものと重さ」、国語の「案内の手紙を書こう」の単元をプロジェクト化しようと検討していた。

 1年生も近々「ちょこっとマーケット」を計画している。担当教員は「どんなことができるか、どんなことがやりたいか、子どもたちにもアイデアを募集した。例えば、近くの商店街にガチャガチャを設置して、自分たちの制作物を無人で販売するなどのアイデアが出ている。今、実現のために準備を進めている」とワクワクした様子でプロジェクトマップに書き込んでいた。

 また、6年生の担当教員は、全校で10月に実施予定の「長原フェスティバル」で、劇や漫才、ダンスなどを計画。各教科の年間の単元配列表を見ながら、体育や音楽の表現活動や社会のSDGs、算数のデータ活用などの単元をプロジェクト化していこうと計画していた。

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