小学校でこそ「人類の始まり」の学びを 3学会が共同声明

小学校でこそ「人類の始まり」の学びを 3学会が共同声明
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 次期学習指導要領の改訂に向けた議論が中教審で進む中、日本考古学協会(石川日出志会長)など3つの学会が6月11日、小学校の歴史学習に「人類の出現から旧石器時代」の学びを盛り込むよう求める共同声明を発表し、阿部俊子文科相と橋本雅博中教審会長に送付した。同協会は「豊かな感性が育つ義務教育の段階で、人々のつながりや互いの文化を尊重する心を育てる『人類の始まり』を学ぶことは、大変意義がある」と強調している。

 共同声明をまとめたのは、同協会と日本人類学会(海部陽介会長)、日本旧石器学会(堤隆会長)の3団体。

 声明によると、人類学や考古学の研究では、人類の歴史として東アフリカを出発した集団が世界に拡散し、多様な気候や風土に適応しながら独自の生活習慣や文化を育んできた道筋が明らかになってきているとし、「人類の進化とともに多様な環境を克服してきた長い歴史は、先人の生きる力と知恵を理解する文理融合と文理横断的な学びの視野を育むものでもある」と学ぶべき意義を強調している。

 しかし、学習指導要領の歴史分野の学習内容は、「国の始まり」以前の記載が簡略化されて2020年度の検定以降、旧石器時代の記載が教科書から消えたとして、「学術の振興や国が定める教育の目的に相反する傾向として深く危惧している」と懸念を示した。

 こうした中で、現行の学習指導要領では小学6年生の社会科で国際理解に関する項目が記載されていることも踏まえ、「歴史の学びを人類の誕生から始めることで、世界各地で暮らす人類は同じヒトとして尊重すべき仲間であることを伝えられる」などとして、学習指導要領の改訂にあたっては、小学6年の歴史学習に「人類の出現から旧石器時代」を盛り込むよう求めている。

 12日には3学会による共同声明に関する説明会がオンラインで開かれ、日本考古学協会社会科歴史教科書等検討委員会の谷川章雄委員長は「子どもが成長する最初の頃に人間がどこから来たか、日本列島にいつから人が住み始めたかについてはぜひ学ぶべきで、これが欠落しては人類史は語れない。世界の多様性を考えるときに非常に重要なポイントであり、学習指導要領改訂の中に盛り込んでほしい」と述べた。

 また、別の委員らも「豊かな感性が育つ義務教育の段階で、人々のつながりや互いの文化を尊重する心を育てることは意義がある」「いわゆる外国にルーツを持つ子どもが増える環境の中で、人類が一つと学ぶことは人権教育のベースとしても大切ではないか」などと、小学校で学ぶ必要性を訴えた。

【訂正】正しくは「日本考古学協会社会科歴史教科書等検討委員会の谷川章雄委員長」でした。訂正し、お詫びします。

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