いつの頃だったか…確か、昇進が決まり、はなむけの言葉をいただいた時だったと思う。先輩の先生から「〝してもらえる人〟になりなさい」と声をかけていただいた。その意味を考える力も余裕もなかった私は、〝してあげる人〟の間違いではないかと思っていた。
最近になって、この〝してあげる人〟が気になり出した。先生が子どもに対して、管理職が教職員に対して、指導者が実践者に対して、学習や仕事の結果が出せるようにしてあげる姿は、親切で優しそうに見える。きっと、してもらった人から感謝をされて、互いに気持ちもいいと思う。しかし、してあげる間は、子どもも教職員も実践者も、自分でできるようにはなっていない。結果、先生・管理職・指導者は〝してもらえる人〟にはなれない。
そういえば、他の先輩からこんな言葉をかけていただいたこともある。「自分がしたことのある仕事、できるようになった仕事は、人にやれ(あげなさい)。自分がしたことのない仕事、できない仕事は、自分でやれ(引き受けなさい)」
「〝してもらえる人〟になりなさい」ということは、自分でできるようになった仕事を人に任せ、人が結果を出すようになるまで見守り、支え、育てなさいということだったのかもしれない。私がなすべきことは、果たしてのこった時間で成し遂げられるのだろうか…こうしている場合ではない。
(阿部路代・名古屋市立八熊小学校長)