多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策として、今後の教員の採用・研修の検討を行っている中教審の教員養成部会は6月27日、第151回会合を開き、教員研修をテーマに全国連合小学校長会(全連小)会長の松原修臨時委員(東京都武蔵野市立第二小学校校長)や、全国高等学校長協会(全高長)会長の内田隆志臨時委員(東京都立三田高校校長)らが、現状の教員研修の課題を発表した。松原臨時委員は増加する初任者や臨時的任用教員の研修体制を、内田臨時委員は任意研修団体の有用性をポイントに挙げた。2022年の法改正によって制度化された教員研修の受講履歴記録の作成や、その履歴を活用した校長と教員の対話に基づく研修の受講奨励の状況について文部科学省から報告があり、制度の理解が不足していることや、校長と教員の間に認識のギャップがあることが浮き彫りとなった。
この日の会合ではまず、文科省が研修受講履歴記録の作成やその履歴を活用した対話に基づく受講奨励の状況に関するアンケート結果を公表した。アンケートは全連小など校長会の協力を得て、小、中、高校の校長1330人と教員5668人に行った。
アンケートによると 、24年度に研修受講履歴を活用した対話に基づく受講奨励を行った校長は小、中、高校合わせて約80%に上った。しかしその際、教員育成指標や教員研修計画、教員自身の研修ニーズ、強みや弱み、今後伸ばすべき力、学校で果たすべき役割などを「十分踏まえて行った」または「おおむね踏まえて行った」と答えた割合を見ると、校長は85%ほどなのに対し、教員は約70%と認識の差があった。
こうした点を「あまり踏まえずに行った」または「特段踏まえずに行った」と答えた校長にその理由を尋ねると、「制度の理解不足または制度を意識していなかったため」や「十分な時間を確保して『対話と奨励』が行えなかったため」が目立った。
次に、松原臨時委員は24年度の全連小の研究紀要を基に、公立小学校の教員研修の課題を整理。特に、24年度に初任者が配置された小学校は約6割、臨時的任用教員の配置があった小学校は9割近くに上っていることを踏まえ、松原臨時委員は「学校現場では複数の経験の浅い教員を日常的に支える体制が求められていることが分かる」と指摘。研修の時間確保や教員が研修に出やすくなる人的配置などを求めた。
内田臨時委員は、東京都教職員研修センターが都内のさまざまな教員の任意研修団体を研究推進団体として認定し、研究奨励費を配布したり、研修出張を認めたりしている取り組みを紹介した。内田臨時委員は任意研修団体の活動に対し、「財政的な支援や出張研修としての認定など、積極的な活用を今後図っていくことが必要と考えている。文科省としても支援してほしい」と提案。研修履歴を活用した対話に基づく研修の受講奨励の際にも、任意研修団体での研修を記録として積極的に組み入れるべきだとした。
こうした校長からの意見に対し、橋本雅博委員(住友生命保険相互会社取締役会長、日本経済団体連合会教育・大学改革推進委員長)は、民間で行われている研修の現状を踏まえつつ「自分自身が必要なスキルを自覚して、それを学んでいく姿勢を応援していく体制をつくっていく必要がある」と述べ、教員自身が課題感やニーズを基に研修やセミナーを選んでいけるようにするためのさまざまな配慮が重要だと強調した。