児童生徒自殺の背景調査見直しへ骨子案 「平常時の備え」強化へ

児童生徒自殺の背景調査見直しへ骨子案 「平常時の備え」強化へ
児童生徒の自殺を巡る背景調査の指針見直しを検討した有識者会議=オンラインで取材
【協賛企画】
広 告

 児童生徒の自殺対策などを検討する文部科学省の有識者会議が7月2日、オンラインで開かれ、自殺が起きたときに学校などが行う背景調査の指針見直しの骨子案が示された。骨子案では、「平常時からの備え」の強化に向けて、校内でのチームづくりや、1人1台端末を活用した子どもの心の健康チェックの推進などが明記されたのをはじめ、遺族への説明や調査に関する意向確認のための様式を新たに設けて、遺族に寄り添う対応をする方針が示された。同省は今後も議論を重ね、年内の指針見直しを目指す。

 児童生徒の自殺調査を巡っては、2014年に策定された「背景調査の指針(改訂版)」で、全件について学校が事実関係を整理する「基本調査」を行い、学校生活に関係する要素がある場合や遺族から要望がある場合は、外部専門家を加えた「詳細調査」に移行することが定められている。前回改訂から10年以上経過して、児童生徒の自殺を巡る状況が変わっていることなどを踏まえて、指針の改訂に向けた検討が進められている。

 同日の会合では、文科省から背景調査の指針見直しに向けた骨子案が示された。この中では、第2章を「平常時からの備え」として、自殺事案を生じさせないための対応を強化する方針が示された。

 学校の備えとして、校長をリーダーとする「校内連携型危機対応チーム」などの組織化や、医療福祉機関との連携強化、悩みを抱えた児童生徒の早期把握のため、「1人1台端末を活用した心の健康観察」導入の推進などが盛り込まれた。さらに学校の設置者の備えとして、学校関係者への研修の充実や専門家の助言を得るための体制整備などが記載された。

 背景調査については、遺族へ調査について説明する際の様式例を示すことが記載され、これを活用して遺族に寄り添った対応を行うことや、基本調査から詳細調査に移行する際は遺族の希望をしっかり確認できるよう、意向確認の様式を新たに設けることが明記された。

 さらに詳細調査報告書がまとめられた後は、再発防止など今後の自殺対策に生かすため、文科省とこども家庭庁で共有することも記載された。

 委員からは骨子案に対する意見や要望が相次いだ。坪井節子委員(弁護士)は「1人1台端末を活用した心の健康観察は東京23区内など各地で始まっているが、毎日多数の相談が寄せられている上、『学校に言わないで』など難しい相談も多いようだ。相談体制をどう考えているのか」と質問した。

 同省の担当者は「まず子どもたちが直接話しづらいモヤモヤとした部分を、校内でしっかり共有してどう対応するかなど、チーム学校で検討していくことが必要であることをしっかり記載したい」と答えた。

 米玉利優子委員(さいたま市教委学校教育部総合教育相談室参事兼室長)は「平常時からの備えは大事であり、学校関係者を対象とした研修の充実は必要だが、子どもが命を絶つことに関わる先生がたくさんいるわけではないので、どう自分事として捉えてもらうかが重要だ。若い教員にも伝わるように分かりやすく事例を挙げるなど、方法を検討してほしい」と要望した。

 新井肇委員(関西外国語大学外国語学部教授)は「報告書がまとまった後、同地域の教職員で共有すると前のガイドラインでもあったが、実際にはなかなか行われていない。自殺事案はデリケートで難しいと避けられがちだが、同じことを起こさないためにも、再発防止に活用することが望ましいと記載してほしい」と要望した。

広 告
広 告