水に落ちたら空を見て、お腹を出して 着衣泳の教員研修

水に落ちたら空を見て、お腹を出して 着衣泳の教員研修
呼吸ができる状態で水に浮く姿勢を実際にやってみる教員ら=撮影:藤井孝良
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 子どもたちが海や川に親しむことが増える夏休みを前に、水難事故の防止につなげようと東京都葛飾区立東金町小学校で7月2日、日本赤十字社東京都支部による着衣泳の指導の教員研修が行われた。教員自身も服を着て水に浮く体験をし、水に落ちたときに身体を浮かせる姿勢や自分以外の人が溺れてしまったときの対処法などを教わった。

 こども家庭庁の集計によると、子どもの不慮の事故死に占める溺死や溺水の割合は10~14歳で最も多く、5~9歳も交通事故に次いで2番目に多い。水の事故から子ども自らが命を守る力を付けるため、水泳の授業における着衣泳の適切な指導を広めようと、日本赤十字社東京都支部ではおととしから着衣泳の教員研修を実施している。

 この日の研修では、教員らはまず水着でクロールや平泳ぎ、背泳ぎを泳いだ後に服を着て、同じように泳いだ際の違いを比較。着衣だと身体を動かしにくく、重く感じることを体験した。

 指導役の日本赤十字社東京都支部事業部健康安全課主査の小高泰士さんは「体験を通して、子どもたちに服を着て泳ぐことの大変さを理解させ、泳ぐのを諦めさせる。一番大切なのは、鼻と口を水面の上に出して浮くことだ」とアドバイス。呼吸ができる状態で水に浮かぶ「背浮き」の習得に向けて、「空を見て、手はバランスを取るために両方開く。お腹を出して浮いて待つ」という声掛けを教えた。

 小高さんの指導の下、この姿勢を取っていても、顎や腰を引いてしまうとすぐに沈んでしまうので、そうならないように意識する必要があることや、苦手な子どもには空のペットボトルを胸のあたりに抱かせて浮力を得る方法などもあることも、教員らは体感的に学んだ。

 これらの水難事故から自分の命を守る方法を知った上で、小高さんは、家族や友達など自分以外の人が溺れたとき、水に入って助けてはいけないことを子どもに徹底指導することを強調。すぐに119番通報して救助を求めることや、自分で助ける場合でも、陸上から浮力のあるものを投げ入れたり、長い棒を差し出すなどの方法を選び、助ける際に自分自身も引き込まれて水に落ちないように姿勢を低くすることなどを実演を交えて解説した。

 同小体育主任の渡邊駿介教諭は「教員も知らないことがあるので、プロに教えてもらえると『こうすれば助かる』と自信を持って子どもたちに伝えられる。ドラマなどの影響からか、誰かが溺れていたら水に入って助けるというイメージが子どもたちや教員自身の意識の中にもある。子どもたちには、誰かが溺れていることに気付いても、自ら水に入って助けてはいけないということを伝えたい」と話した。

 小高さんは「教員研修を通じて着衣泳の指導のポイントを知ってもらい、多くの子どもに伝えてほしい。暑さが厳しくなればなるほど、海や川に出かける機会も増える。子どもたちには、夏休みに入る前に自分の命を守る方法を身に付けてほしい」と呼び掛ける。

 

【キーワード】

着衣泳 実際の水難事故は衣服を着ているときに起こる場合もあるため、それを想定し、実際に服や靴を身に着けた状態でプールに入る体験をする学習。背浮きと呼ばれる態勢で、身近なものの浮力を利用して水に浮き続けることなどを学ぶ。

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