生成AIを「飼い慣らす」すべを 教員目指す学生に特別講義

生成AIを「飼い慣らす」すべを 教員目指す学生に特別講義
学生たちが活発に意見し、生成AIと人間の書く文章について考えを深めた=撮影:板井海奈
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 「生成AIを飼い慣らして、人間にしか書けない文章を書いてみよう」――。東京理科大学教育支援機構教職教育センターの井藤元教授がこのほど、教員を目指す学生に向けて生成AIを活用した特別講義を開催した。学生らは生成AIと人間の書いた文章を比較して分析したり、生成AIを使いながら記事を執筆したりしながら、生成AIを使いこなすスキルや心構えを習得していった。

生成AIが書く方が読みやすい?

 この講義は井藤教授が監修し、毎日新聞社が開発する「記者トレ」の一環。「記者トレ」は取材や記事執筆など新聞記者の仕事を疑似体験しながら、発想力や表現力などの習得を目指す学習プログラム。今回は内容をアップグレードし、学校現場でも活用が広がる生成AIを取り入れた。

 井藤教授は「生成AIを飼い慣らす(使いこなす)すべを知っておかないと、教員になったときに指導ができない。生成AIの可能性と限界を知ってもらい、人間にしかできないことは何かと考えてほしい」と狙いを明かした。

 全4回の講義を通して、学生たちは生成AIと人間の書く文章に向き合った。

 例えば、生成AIと新聞記者がそれぞれ書いた文章を比較して分析するワーク。ある学生は、生成AIの文章の方が「余分なものがなく、きれいで読みやすいと感じた」と指摘した。井藤教授は「良い文章とは何なのか。読みやすい文章が必ずしも良い文章とは限らないのではないか」と学生に問い掛けた。

 ナビゲーターとして登壇した、アナウンサーの井上真帆さんは自身の経験を振り返りながら「文体はしゃべり方そのもので、書き手のリズムがある。だからある人にとっては、生成AIが書いた記事の方が読みやすいというのもうなずける。ただ生成AIが書いたものは引っかかりがなく、次の日に記憶に残っていないように思う。人間が書くような引っかかりがある方が、心に残るものは多いのではないか」と語った。

所見を書くときの参考に

 最終回では学生らがお互いにインタビューをして執筆した人物紹介の記事を、現役の編集記者が添削した。生成AIの使用は自由だったが、その活用方法は学生によってさまざまだった。

 生成AIの書く記事の出来がいまひとつで全て自分が執筆したという学生、執筆した文章を生成AIに校正してもらったという学生。また別の学生は、インタビュー内容を箇条書きにして、「この部分に重きを置いた記事を書いて」とプロンプトの書き方を工夫し記事をまとめたという。

 全4回の講義を終えた学生は「人間が書く文章の方が、人の気持ちを動かすものが多いと思った。もちろん生成AIの文章が悪いわけではなく、伝えやすい場面もある。使い分けながら活用していきたい」と振り返った。

 また将来、教員になったときの活用手段について触れる学生もおり、「(インタビューや人物紹介の記事執筆を通して)他人のことについて文章にするときは、配慮しなければならないと感じた。教員になって生徒の所見を書くときなども、『こう伝えた方がいいかな』と考えようと気付くきっかけになった」と話した。

 井藤教授は「今回は問いの種をまいただけで、教員になってからもこの講義で学んだことを問い続けてほしい。良い文章を書く旅はまだ始まったばかり。私も含め、皆さんもこれからその道を一緒に追究していきましょう」と締めくくった。

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