モチベーションや仕事満足度が高い教員、管理職からのサポートを受けられている教員は離職意向が小さい――。国立教育政策研究所が7月9日に公表した「教育分野の公務労働に関する調査研究」の報告書で、こうした傾向が明らかになった。
この調査では教員のモチベーションと働き方の関連について、諸外国で用いられている公務員特有のモチベーション「PSM(Public Service Motivation)」の観点から分析した。PSMは「自分自身に対してよりも、他者や社会全体に対して貢献しようとする点」が特徴。
調査では「人にどう見られても他者の権利をすすんで守ろうと思う」「社会にとって意義のある公教育に関わることは、自分にとって重要だ」などの設問で、回答者のPSMを測った。公立小中学校の教員を対象に、2023年3月と24年3月の2回に分けてインターネット経由で実施。それぞれ1334人、1439人が回答し、このうち633人は両方に回答した。
報告書によると、まず小学校教員はPSMが高くなるとストレスが小さくなる、仕事満足度が高くなる傾向にあった。一方、中学校教員を見ると、PSMが高い人は仕事満足度も高い傾向が見られた。また小学校と中学校ともに、管理職や同僚からのサポートを受けられている教員は、PSMも高かった。
さらに教員の離職意向とPSMの関連を分析したところ、小学校と中学校ともにPSMや仕事満足度の高さ、ストレスの低さ、管理職からのサポートの手厚さが離職意向を抑制する要因であることが分かった。
一方でPSMを高めることについて、課題も浮かび上がった。分析結果によると、PSMが高い小学校教員は土日の業務時間が長い傾向が見られ、同じくPSMが高い中学校教員は土日の睡眠時間が短い傾向にあった。
報告書では「教員の勤勉さとして肯定的に捉えることもできるかもしれないが、長時間労働を是正していく上では考慮しなければいけない課題とも捉えることができる」と指摘している。