グーグルの生成AI「Gemini」を学校現場で活用するアイデアをシェアするイベントが7月15日、東京都渋谷区のグーグル合同会社で開催された。三重県立名張青峰高校の向山明佳教諭が生成AIを活用した情報科の授業実践を発表し、「『自分(生徒自身)が何をしたいのか』が一番重要」と指導する上でのポイントを明かした。また同社が、生成AIを使って教員の働き方や児童生徒の学びを変革する自治体を支援する「Gemini パイロット自治体プログラム」を募集することも併せて発表された。
「Geminiで変わる普通の学び」をテーマに登壇した向山教諭は冒頭で、「普通の学校の普通の学びが、生成AIでどういうふうに変わっていくかを知ってほしい」と話した。同校は開校10年の普通科高校。ICTの利用については試行錯誤を重ねながら、今では教員が指示したときだけでなく、生徒の判断で必要に応じてタブレットを利用しているという。
「『推し』について生成AIに聞いてみよう」。向山教諭は、初めて生成AIを使う授業で生徒たちに必ずこう指示する。ハルシネーション(AIが事実に基づかない情報を生成する現象)を探す練習の一環だ。「生徒たちは自分の好きな『推し』についてはよく知っているので、ハルシネーションかどうか判断がつく」と言い、生徒それぞれが見つけたものをGoogleフォームで集めて全員に共有する。そこでハルシネーションの多さを体感してもらい、どんなことに注意しながら生成AIを活用していくかの学びにつなげていくという。
3年生の「情報デザイン」の授業では、Geminiを使ったアプリ開発に挑戦した生徒の様子についても触れた。苦手な英語を楽しく学べるゲーム性を持ったアプリや、メークの色彩を試すことができるアプリなど、オリジナリティー溢れる作品が出来上がったという。
向山教諭は「生徒全員がクリエーターになった」と語り、生徒たちの創作意欲が向上したことやプロンプトの教え合いが始まった様子などを説明した。その上で「『自分が何をしたいのか』が一番重要になる。AI時代の普通の学校として、どんどん生成AIの性能が上がっていく中で、生徒が実現したいことのレベルもどんどん上げ続けられる教育をしていきたい」と語った。
また同日に公表された「Gemini パイロット自治体プログラム」では、教員の働き方や児童生徒の学びの変革を、生成AIを活用して推進していく自治体を募集。5つの自治体が選抜され、同社の支援の下で、教員の業務効率化や学習準備のサポート、児童生徒の新たな学びの実践に取り組む。
募集期間は7月22日から8月29日。応募資格はGoogle Workspaceを日常的に利用していることや、全教員アカウントでGeminiが利用できることなど。応募にあたっては、今後オンライン説明会が開催される予定。