全日本教職員組合(全教)が行った教職員未配置に関する実態調査で、今年5月1日時点で少なくとも36都道府県12政令市で合わせて3662人の未配置が生じていることが7月17日、分かった。昨年同時期にも回答のあった自治体のみで比較すると、全体の未配置数はほぼ横ばいだが、未配置への対応について「見つからないまま(人的措置なし。校内の教職員でやりくり、少人数授業取りやめなど)」の割合が6割を超え、昨年から倍増した。背景には非常勤講師の確保が厳しくなっている状況があるとみられ、記者会見した板橋由太朗中央執行委員は「過重な労働の中で深刻な実態であり、国に改善・解消を求めていきたい」と話した。
調査は全教への参加組織などを通じて各教育委員会に依頼するなどして実施し、5月1日時点の状況を集約した。調査結果によると、教職員の未配置は36都道府県12政令市で3662人に上った。学校別では、小学校1478人、中学校1184人、高校418人、特別支援学校514人など。年度当初からの定数の欠員は771人、産育休・病気などの代替者が見つからない欠員は1058人に上った。
このうち昨年同時期にも回答のあった33都道府県9政令市のみで比較したところ、教職員の未配置は3067人(昨年同時期より約6%減)で、ほぼ横ばいだった。さらにこの中で未配置にどう対応しているか聞いたところ、人的措置のない「見つからないまま」が64.4%で昨年(28.2%)から2倍以上に増えており、多くの学校が校内の教職員のやりくりや少人数授業を取りやめて対応している状況が明らかになった。また、「非常勤等で対応」の割合が31.6%で昨年(71.2%)から半減し、「他校に勤務している正規教職員の兼務」が昨年のゼロから3.4%に増えた。
これについて板橋中央執行委員は「『見つからないまま』の割合が2倍以上に増えていることは、非常勤講師を見つけることが難しくなっていることの表れで、兼務対応が増えたことは人手不足の象徴と捉えている」と述べた。
また、校種別で比較したところ、小学校や高校で未配置数がやや減ったのに対し、中学校では約1.1倍に増えたことが分かり、板橋中央執行委員は「中学校で35人学級を進める方針が打ち出されているが、教員が確保されず40人のままということが起きかねない深刻な状況だ」と指摘した。
一方、現場の教員などから具体的な記述も寄せられた。この中では、「担任不在のクラスはすでに崩壊していた」(小学校)、「社会科教師だが2年生の理科を持たされ、生徒たちに十分な学力をつけることができなかった」(中学校)など、授業や子どもたちへの影響を指摘する声をはじめ、「教員2人と実習教員がいるべきチームの授業を全盲の先生1人で対応している」(特別支援学校)、「世界史の教員が地理の授業も行い、毎日夜中2時すぎまで授業準備をしている」(高校)など、教員の負担増を訴える声などがあった。
こうした声も踏まえて板橋中央執行委員は「未配置の穴を学校現場で埋めることは、ただでさえ過重な労働の中、考えられない仕事量をこなさなければいけない状況と言える。病休ドミノという言葉も聞かれるが、まだ1学期の時点で深刻な実態と重く受け止めている」と述べた上で、「これから概算要求の時期を迎える。文部科学省にこうした実態の改善・解消に向けて具体的な回答を求めたい」と強調した。