学校への出張授業をアップデート 企業関係者向けにシンポ

学校への出張授業をアップデート 企業関係者向けにシンポ
多くの企業関係者を前に、これからの出張授業に求められる視点を解説する塩田准教授=撮影:藤井孝良
【協賛企画】
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 その出張授業、新しい教育ニーズに対応している?――。企業が学校などに行う出張授業をアップデートしようと、(一社)「プロフェッショナルをすべての学校に」(プロ学)は9月1日、東京都新宿区の早稲田大学で企業関係者約100人が参加するシンポジウムを開いた。企業による出張授業や教材開発の好事例を踏まえ、探究学習をはじめとする学校現場に求められている学びと、企業などの外部連携の新たな関係性を模索した。

 学校現場では地域人材や企業などと連携した取り組みが盛んになりつつあるが、学校のニーズと必ずしも合致していないなどの課題も抱えている。さまざまな企業と連携して、地方の学校とつないだ出張授業や教材開発を展開しているプロ学では、これからの学びに企業による出張授業や教材開発をより効果的なものに進化させようと、今回のシンポジウムを企画した。

 プロ学代表理事の塩田真吾静岡大学教育学部准教授は講演で、企業による出張授業について▽これまでの出張授業のスタイルを変えずに、ずっと実施し続けている▽知識を伝えたり、体験して終わったりしてしまっている▽教材をつくって公開・配布しても、学校でほとんど使われていない――などの課題が見られると指摘。

 その上で、次期学習指導要領では教科などの「見方・考え方」が重視されるようになり、探究的な学びによって「答え」よりも「問い」が大事にされていることを挙げ、「その日限りの出張授業で、知識を伝えるだけでなく、そこからいかに、その後に生きる『見方・考え方』を残していけるかが大切だ。単に『答えはこうだ』と教えるのではなくて、自分で問いをつくる力や新しい学びのきっかけになるような出張授業が求められる」とアドバイスした。

 さらに、学校と企業が連携するケースが多いキャリア教育では「出張授業で『こんな仕事をしている』と話す機会は多いと思うが、これからはそれだけではなくて、仕事以外でどんなことを楽しんでいるのかという生き方を伝えていくことが増えていくのではないか」と問題提起した。

 講演の後は、こうした観点を踏まえた実践事例として、住宅商材メーカーのLIXILが取り組んでいるリスクを深刻度で捉えるトレーニング教材を活用した出張授業や、富士通デザインセンターによる学校と連携したデザイン思考による課題設定支援ツールの開発、楽器・音響メーカーのヤマハが社員の趣味や休日の過ごし方をまとめた「余暇図鑑」などの取り組みが紹介され、参加者同士で出張授業の課題や可能性について意見交換する場も設けられた。

 

【キーワード】

探究学習 実生活や社会の中で自ら設定した問題を解決するために情報を収集し、整理・分析し、まとめ・表現する一連のプロセスを螺旋(らせん)的に繰り返しながら学びを深める学習活動。変化の激しい時代に求められる資質・能力として「総合的な学習(探究)の時間」をはじめ、各教科などで重要視されている。

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