デジタル教科書活用の学年・教科など指針策定へ 中教審WGで素案

デジタル教科書活用の学年・教科など指針策定へ 中教審WGで素案
審議まとめ案を示したWGであいさつする堀田主査(中央)=撮影:山田博史
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 次期学習指導要領下でのデジタル教科書に関する制度上の課題などを検討している、中教審デジタル学習基盤特別委員会のデジタル教科書推進ワーキンググループ(WG)の第11回会合が9月5日、文部科学省で開かれ、審議まとめの素案が示された。素案では、デジタル教科書も教科書と認めた上で、導入する学年や教科、学習場面など、具体的な活用方法のイメージを示すガイドライン(指針)を作成する方向性が示された。デジタル教科書の使用は次期学習指導要領の実施に合わせて2030年ごろを見据えており、同省は来年度中のガイドライン策定を目指す方針。

 デジタル教科書は、現行制度では、紙の教科書の内容をそのままデジタル化した「教科書代替教材」と位置付けられ、使用義務や検定・採択・無償給与の対象外となっているが、小中学校で一部教科の提供が進み、今年度は英語で約100%、算数・数学でおよそ55%に提供されている。WGでは、デジタル教科書活用による学習効果を踏まえ、活用の促進策や次期学習指導要領でのデジタル教科書の制度の在り方を検討してきた。

 素案では、基本的方向性として、紙だけでなくデジタル教科書も教科書と認めて現場が選択できるようにすることを制度上位置付け、デジタル教科書を検定による質の担保や採択、無償供与などの対象とすることが適当であると打ち出した。一部が紙、一部がデジタルのハイブリッド教科書も認めるべきと盛り込まれた。

 また、紙とデジタルの良さは学年や学習場面で異なるため、国が一定の指針を示すことが望ましいと教育関係団体から意見が出されていることを踏まえ、国が意向調査などを行った上で、デジタル教科書を取り入れる学年や教科をはじめ、どの学年でどのような教科、学習場面で活用が期待されるかなど、教科書の構成や活用の在り方について具体的なイメージを示すガイドラインを策定することが必要だと打ち出された。

 さらに紙の教科書でも大幅に増えている、二次元コード(QRコード)先のデジタルコンテンツについては「教材」として位置付けられてきたが、紙の教科書で記載された内容が置き換わる場合は、検定の対象として質を保証すべきであると盛り込まれた。ただし、二次元コード先のコンテンツが増えて教育現場や教科書発行者の負担につながっている点なども考慮して、教科書の一部に位置付けられるものに限定すべきとした。

 当面の推進方策としては、デジタル教科書の配布について、現行の小学5年生から中学3年生を対象にした英語、算数・数学に加えて、多角的な効果検証の観点から、その他の教科・学年についても現場のニーズや影響を考慮しながら配布を進めることが重要だとしている。

 また、教員の指導力の向上が極めて重要でありながら、デジタル教科書に関する研修を受けたことがある教員の割合は2割程度と少ないことから、都道府県レベルなど広域での教員研修を充実させることや、教員養成課程でのデジタル教科書の利用環境の改善も必要だと盛り込んだ。

 会合では各委員が素案に対する意見を述べた後、堀田龍也主査(東京学芸大学教職大学院教授)が「デジタルの力でリアルな学びを支えるという基本的な考えを基に、子どもの学びの環境をどう整えていくかについて審議してきた。教科書を網羅的に教えるという慣習やコストの負担などいろいろ課題があるが、できるだけ最適解になる組み合わせを考えて進めていきたい。基本的な方向性についてはおおむね意見が一致したと思うので、次回は素案でなく、審議まとめ案を示したい」と述べて会合を締めくくった。

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