管理職研修「審査論文をどう書くか」(109)

管理職研修「審査論文をどう書くか」(109)
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テーマ

 あなたの学校では、業務の精選などの取組を行い、在校時間等の時間の縮減が順調に進んでいます。しかし、一部の教職員からそれぞれの事情や抱える仕事量が異なる中で、一律に退勤を促されることに対する不満や、児童生徒のために取り組んでいる業務を縮減することによる教育の質や教職員のモチベーションの低下を懸念する声が生じています。さらに一部の保護者から、「これまでやってくれたことをなぜやってくれないのか」といった苦情を受け、対応に苦慮している教員も見られます。あなたは教頭として、教職員の労務管理と教育の質や教職員の意欲の維持・向上にいかに両立し、働きがいのある職場づくりをしていきますか。具体的に述べなさい。

【テーマの分析・解説】

 各学校で、業務の精選や在校時間縮減などの働き方改革が進む一方で、それに伴っていくつかの課題が指摘されている。この論文テーマでは、課題として、(1)一律退勤への不満、(2)教育の質の低下や教職員の意欲低下への懸念、(3)保護者の理解不足、という3点が挙げられている。これを踏まえた上で論文の柱立てを考えることが大切である。

 そこで、教職員が心身ともに健康で、高いモチベーションで働くことができる職場づくりを目指した教頭としての対応について、「適切な労務管理と教職員の意識改革」、「業務の適正化・効率化と環境整備」、「意欲的に働ける、助け合える人間関係づくり」の3つを柱として具体例を示す。

 教職員が長時間勤務によって疲弊していくことで、子どもたちへの教育に支障を来すことがないように、各学校では、業務の精選や勤務時間の管理などの働き方改革が進められている。しかし、単に行事や会議などを削減したり、在校時間縮減を呼び掛けたりするだけでは、教育の質の低下や教職員の意欲の低下を招くことになりかねない。

 教職員が心も体も健康で、意欲とゆとりをもって児童生徒と向き合い、効果的な教育を実践していくためには、管理職が明確なビジョンや具体的な目標を持ち、それを教職員で共有した上で組織マネジメントを進めることが肝要である。

 私は、教頭として、教職員が元気で、毎日前向きに働くことができる職場づくりを、校長の指導を仰ぎながら次のように進めていく。

1.適切な労務管理と教職員の意識改革

 勤務時間の管理は管理職としての責務である。そこで、タイムカードなどにより在校時間の状況を把握した上で定期的な面談を実施し、時間を意識した働き方について指導や助言を行うとともに、日頃の対話に心掛け、教職員の悩みやストレスを早期に発見し、適切なアドバイスを行う。合わせて安全衛生管理体制の整備も重要である。健康診断やストレスチェックが適切に実施されるよう配慮したり、産業医らと連携して健康相談を実施したりして、教職員の健康確保に努める。

 また、教職員の働き方改革への取り組み状況や時間を有効活用して教育成果を上げた実績などを適正に評価することで、仕事に対するモチベーションを高める。さらに時間を意識した働き方や効率的な教材研究の方法などについての校内研修を実施し、その効果を教職員に実感してもらうことで働く意欲の向上を図る。

2.業務の適正化・効率化と環境整備

 限られた勤務時間の中で効果的な教育活動を行うためには、今まで当たり前に教職員が行ってきた業務を見直し、業務の削減や内容の改善を行う必要がある。そのために、校長の指示のもと、教職員間で業務を見直す機会を設定し、削減した方がよい業務の洗い出しや校務分掌の再編成を行う。その際には、業務の目的や教育効果などについて十分に検討し、教育の質の維持・向上に努める。業務の役割分担については、一部の教職員に負担が集中しないように均一化に努めるとともに、適材適所の配置やチームでの分担制にすることによって校務の効率化を図る。

 また、働きやすい職場にするためには、人的環境と物的環境の両方を整えることも大切である。人的環境としては、教職員およびスクールカウンセラーなどの専門スタッフの充実や、外部講師などの積極的な活用に努めるとともに、保護者や地域住民らの学校教育活動への参画を進め、学校のチーム力を高める。保護者や地域には、学校の情報を発信するだけでなく、働き方改革について丁寧に説明して学校の思いを共有してもらい、理解と協力を依頼する。物的環境としては、ICTの活用による文書管理の共有やペーパーレス化などにより、事務の効率化を図る。

3.意欲的に働ける、助け合える人間関係づくり

 教職員が意欲をもって働きたくなる学校、助け合える教職員集団となるためには、日頃から良好な人間関係を築いておくことが大切である。そのために、自ら進んで教職員とコミュニケーションを図り、意見や悩みなどを話しやすい風通しのよい職場づくりに努める。また、報・連・相の徹底などによってチームとして働く意識を高めることも重要である。ミドルリーダーを育成し、リーダーを中心にチームとして協力し助け合える教職員集団の形成を進めていく。

 教職員がいつも笑顔で元気に児童生徒の前に立つことが、児童生徒の健やかな成長につながると考える。私は、校長の指導を仰ぎながら、教職員が健康で働きがいがあり、子どもたちに激動の時代をたくましく生きる力を育むことができる学校づくりに向けて、全力で取り組む所存である。

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