「子ども主語」の主体的な学びの実現に向けて 第37回調研セミナーin名古屋

「子ども主語」の主体的な学びの実現に向けて 第37回調研セミナーin名古屋
【協賛企画】
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 (一財)教育調査研究所が主催する「第37回調研セミナーin名古屋」(協賛:教育新聞愛知支部)が3月11日、ウインクあいち(愛知県産業労働センター)において、Zoomライブによって行われた。「『子ども主語』の主体的な学びの実現に向けて」をテーマに、基調講演、パネルディスカッションを通して学習者主体の授業改善の取り組みについて理解を深めた。今回、より視聴しやすいようにするため3月17日~3月27日までWEB配信期間を設けた。会場には31人、Zoomライブには約174人が参加した。

パネルディスカッションの様子

 2020年、「主体的・対話的で深い学び」を求めた学習指導要領が小学校で全面実施され、昨年は学年進行で高校にまで達した。「主体的・対話的で深い学び」「個別最適な学び」と言われるように、学校現場では教師主導から学習者主体へと授業改善の取り組みがなされているが、コロナ感染症への対応の中、授業改善に多くのエネルギーを割けない状況でもある。

 今、学習指導要領の趣旨を踏まえた授業改善はどのように、またどこまで進んでいるのか。

   ◇ ◇ ◇

 石井英真氏(京都大学大学院教育学研究科准教授)は、基調講演で次のように語った。

  • ICT活用、修得主義、個別最適化された学び、働き方改革は、「学校のスリム化」を招きがち。捨ててはいけないものを見極める必要がある。
  • オンライン学習は、「授業」と「自習」の間の「遠隔学習支援機能」の増設問題として捉える。
  • どれだけ「学び」に光が当たっても、縁の下の力持ちのような形で教師の仕事はなくならない。
  • 共同注視の関係性を軸にした、触発的で媒介的な指導こそ教師の役割の強みである。ICT活用において、伴走者的でコーチング的な教師の指導性として重視される。
  • 「子ども主語」で考えるとは、授業における動詞の主語を子供にして考えること。
  • 教師として成長するとは、子供が「見える」ようになること。
  • 子供のつぶやきをキャッチできること。
  • 子供の学びの本質を見極められること。
  • 子供目線で教科内容の意味や価値を捉えられること。
  • 計画段階で子供をイメージできること。

 基調講演に続いて、石井英真氏、中村和弘氏(東京学芸大学教授)、泉惠美子氏(関西学院大学教育学部教授)、水谷年孝(春日井市立高森台中学校長)をパネリストとしたパネルディスカッションが行われた。コーディネーターは、寺崎千秋氏(教育調査研究所研究部長)。

 中村氏からは、主体的な学びの実現に向けた国語の授業づくりについて話があった。

  • 「子ども主語」の主体的な学びの実現に向けた教師の役割として、「主体的・対話的で深い指導と「子供の学びへのまなざし」が必要である。 「主体的・対話的で深い指導」
  • 主体的であること―この子の学びとどう対峙するのか
  • 対話的であること―どう子供の思考と橋渡しするのか
  • 深い指導を目指して―子供に発見や気付きの手応えをもたらす工夫、子供の学びへのまなざし
  • 捉える―今、この子は、どのように学んでいるか。
  • 判断する―今、この子の学びにどう関わればよいか。
  • 指導する―見守る、声を掛ける、積極的に指導する、提案する、など。

 泉氏からは、外国語教育の立場から主体的な学びの実現について話があった。

外国語教育で考えておきたいポイント

  • ポイント1 子供のやる気や主体性を伸ばす
  • 学習者中心、学習中心に「主体的・対話的で深い学び」を誘うコンテンツを考え、明確な課題と各自で「問い」を持たせる。
  • ポイント2 学習方法、ストラテジーを教えよう
  • 1人1台端末、デジタル教科書が入り、学び方が変わってきた。ICT教材・教具をうまく活用する。
  • ポイント3 目標・活動・評価の一体化で自律的学習者を育成する
  • 自己調整学習のために最終ゴールを示し、到達目標を確認し、そこに至る学習の計画、実施、振り返りの過程を大切に。
  • ポイント4 自律した教師の育成、教員研修の在り方を見直す
  • 学習者、教員、同僚、ともに成長する組織や協働的対話が起きる学びや研修の場が必要。

 水谷氏からは、勤務校の実践を通して、1人1台端末+クラウド環境の日常的な活用による主体的な学びの実現について報告があった。高森台中学校は、昨年10月開催のJAET全国大会の公開校として、GIGA環境の活用について、授業実践を繰り返している。

  • 授業の流れは、「課題の設定」↓教科書を読解しながら各自で「情報収集」↓収集した情報を「整理・分析」↓まとめ・表現(考えを言語化)を基本としている。
  • 端末・クラウドを活用することによって授業が次のように変化した。
  • 「教える」授業から自ら「学ぶ」授業へ変化した。
  • お互いの意見を共有しやすくなった。
  • 全員のことをよく把握できるようになった。
  • コミュニケーションが増加した。
  • 生徒の活動が複線化した。

 寺崎氏は、会場参加者からの「ICTの苦手な教師に対する校長の姿勢はいかにあるべきか」の質問に対して、とにかくやってみることが大事。そうすることでスキルはおのずから身に付いていく。子供から「一斉授業は止めてほしい」と言わせることが理想だとまとめた。

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