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児童生徒がよりよい教育を受けられ、学校への信頼を得るには、教員の教育への強い情熱や高い資質・能力が必要です。しかし残念ながら、少数とはいえ指導が不適切な教員がいることも事実です。あなたは教頭として「指導が不適切な教員」の課題をどのように考え、どのような対応策を講じますか。
文科省は、新たな教員研修制度を導入する教育公務員特例法の一部改正などを受け、「児童生徒に対する指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン」を2022年8月に一部改訂した。
本テーマでは、「指導が不適切な教員」の課題について考えを述べ、その上で、課題を解決するために講じる対応策を、ガイドラインの改正も踏まえながら具体的に述べたい。
一部の「指導が不適切な教員」の言動によって、学校全体がその信用を失うことがあってはならない。対応策を通して、信頼される学校づくりに向け尽力する、教頭としての決意が表れた論文が求められる。
「令和の日本型学校教育」では、全ての子供たちの可能性を引き出す学びの実現を目指している。未来を生きる子供たちのため、われわれ教職員は、時代が求める資質・能力を向上させるべく、日々学び続けている。しかし一方で、ごく一部ではあるが「指導が不適切な教員」がいることも事実である。そのような教員の課題には、「学習指導・生徒指導の力量不足」「同僚とのコミュニケーション不足」「自己有用感の低下」などがあると考えられる。私は教頭として、校長の指導を仰ぎながら、子供たちを大切にし、信頼される学校であり続けるため、以下の対応策を講じる。
児童生徒を大切にした授業、生徒指導ができていないことが、学級崩壊や不登校、児童生徒や保護者との関係の悪化などを招く一番の要因である。分かる授業、人権を尊重した生徒指導ができるよう、教務主任と連携し、当該教員と翌日の指導内容を確認する。次の日には教務主任とともに指導の様子を見守り、業後に一日を振り返る時間を設ける。日々の記録をもとに校長の指示を仰ぎ、適切な指導・助言を行っていく。学習指導・生徒指導・特別支援教育などにおいてアップデートできていない点、これまでの指導が行き届いていない点についても根気よく指導・助言を続け、改善を図る。また、校内の現職教育・生徒指導・特別支援教育などに係る研修の機会を有効に活用したり、校外の研修を推奨したりして、当該教員に必要な資質・能力を高める研修の機会を確保するための手だてを講じる。
「指導が不適切な教員」の課題として、同僚や主任などとのコミュニケーション不足が挙げられる。なかなか自ら報告・連絡・相談ができない教員について、事態が深刻化する前に情報を得るため、毎日校内を回り、授業や生活指導の様子を観察する。また、普段から教務主任、校務主任、学年主任をはじめとする教職員との連携を密にし、指導状況に関する情報の収集と課題への共通理解を図る。同時に支援員など、普段の指導を目の当たりにしている職員からの情報も重要であるため、連絡体制を整える。当該教員に対しては、教員育成指標をもとにした人事評価面談や日常的な声掛けを通して、本人の思いや状況を傾聴しながら、課題認識を促す。それらの情報や状況を記録に残し、個別の研修計画の作成や研修の奨励、校内研修の工夫などを早期かつ効果的に行うことで、不適切な指導の早期対応・未然防止に努める。
「指導が不適切な教員」の中には、特定な分野や場面で強みを発揮しうる一方、苦手な分野や場面では強いストレスを感じ、それが不適切な指導につながっている教員も多い。ICT機器や環境整備に関する知識・技能など、当該教員の強みや特性を生かせる校務分掌を任せることで、自分が教育活動および他の教職員のために貢献しているという自己有用感を高める人材活用、組織づくりに努める。強みを発揮することができた場面や成果については適切に評価する。
一方で、支援や配慮が必要な場面についても当該教員と丁寧な面談や相談を重ねる中で、その特性を受け入れながら一緒に改善の方法を考える。そして、主任やミドルリーダー、必要に応じて専門家などの意見も参考に、チームとして支援していく。
「教育は人なり」と言うように、質の高い教育は、われわれ教職員の強い情熱、高い資質・能力にかかっている。指導に行き詰まり、課題を抱えている教職員をそのままにしないよう、チームとして情報と問題意識の共有、資質・能力の向上を図っていきたい。私は教頭として、校長の指導を仰ぎながら、子供も教職員も誰一人取り残すことなく大切にする学校づくり、保護者・地域から信頼される学校づくりのために、全力を尽くす所存である。