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部活動の地域移行を議論する有識者会議(スポーツ庁)は、今年、指導者の確保や大会の在り方などを盛り込んだ提言をまとめました。2025年をめどに休日の運動部活動から段階的に地域へ移行していくというものですが、あなたは教頭としてその課題を踏まえてどのように取り組みますか。現任校の状況も踏まえ、具体的に述べなさい。
「地域クラブ活動」は、学校現場だけでは解決することが不可能で、今日的かつ、早急に取り組んでいかなければならない課題だと考える。本テーマには、運動部限定で出題されているが、多くの学校現場では、文化部も抱えており、運動部に限った課題ではない。スポーツ庁、文化庁合同で「学校部活動及び新たな地域クラブ活動等の在り方等に関する総合的なガイドライン」が22年12月に示されている。この話も加速度的に進むかと思われたが、財政面の見通しが立たず、トーンダウン気味ではあるが、着実に地域移行に向けて進んでいくであろう。
まずなぜ、「部活動の地域移行」が導入されることになったのか。それは、これまでの部活動が抱える問題点に原点がある。
生徒が主体的に部活動に取り組むことによって、責任感や連帯感を養ったり、自主性を育成したりすることが期待できる。しかし、問題点も多いのが実情である。少子化は年々深刻化している。中学校の生徒数が減り、活動の存続が厳しい自治体や部活動が増えている。やりたい部活動がない、人数が不足していて試合に出られないといった状況に直面している生徒もいる。また、指導者でもある教員の業務負担も過多になっている。部活動指導に従事すると、当然自身の抱える業務は後回しになる。在校時間は増え、長時間労働は免れない。休日も練習指導や大会の引率など、プライベート返上な働き方が強いられる場面もある。ましてや、経験のない部の顧問を受け持つことによる精神的負担増などがあげられ、そもそも指導力・技術力に関して十分な人材といえないのではないか。最近では、部活動のメリットが語られることが少なくなり、教師の本来業務を脅かす存在としての「部活動」が語られている。「部活動」のあるべき姿を管理職として、しっかりとしたビジョンをもち、どのように取り組んでいくのかを論述する必要がある。以下に具体例を示したい。
「教師の本分は」と問われたら、誰もが迷わず「授業」と答えるであろう。しかし、教師の仕事には、授業だけでなく、校務分掌が割り振られ、学校を円滑に動かしていくための役割が与えられる。教頭として、教職員の仕事に従事する様子を踏まえ、校長の指導を仰ぎ、部活動の地域クラブ活動移行に向けて、次の3点の具体的な取り組みを実践していく。
わが校においても、部活動に熱心で、成果を上げている教師ほど、生徒や保護者からの信頼が厚い傾向にある。また在校時間も超過傾向にあることをあまり苦にしていない現状がある。部活動の主たる目的は、生徒の自主性を育て、異学年集団との活動を通して、連帯感や責任感を養うことであって、勝つ事だけを目的とした活動ではない。であるならば、活動時間の見直しを図ることは必然であり、生徒の心身の発達を考え、活動時間を設定することが必要である。そのためには、教職員・生徒・保護者の意識を変えていく必要がある。勝利至上主義に向かいやすい生徒・保護者への理解を求めるためにPTA総会や保護者会などの機会を活用し、活動時間を見直していくことへの理解を求めていく。また、顧問の配置を複数とし、一人の職員に負担が増えていかないように校務分掌を割り当てていく。
地域移行に向けて、外部指導者の確保が必然である。人がいれば良いということではない。専門的知識や技能を有するだけでは、部活動指導をお願いしていくわけにはいかない。学校側・顧問の指導意図をしっかりと理解した上で、部活動の指導に協力していただける人物でなければならない。保護者・地域との連携なくしては、人材確保のための情報を得ることはできない。そのためには、教頭として、地域との信頼関係を築き、学校の教育活動を支えてくれる人脈を構築していく事に努めていく。
管理職として、教職員の健康管理を適切に把握することは、大切な業務である。在校時間管理をすることはもちろんのこと、勤務時間外に部活動の占める割合をしっかりと把握をする。その上で、当該教職員とともに適切な働き方になっているかという点について、話し合う場、見直す機会をもち、改善を図っていく。
また、組織として対応していけるように、働き方について検討できる場を設定する。
地域クラブ活動への移行を見据え、以上3点に取り組むことで、学校現場が抱える諸課題について、真摯(しんし)に取り組んでいきたい。私は、教頭として、教職員が、やりがいをもち、教育活動にまい進できる環境を整えていけるように努めたい。そして、校長の意をくみ、地域とともにある学校づくりに向け、全力を尽くす覚悟である。