【先輩からのとっておきアドバイス】 経験のない競技の部活動指導

【先輩からのとっておきアドバイス】 経験のない競技の部活動指導
【協賛企画】
広 告

Q これまで経験したことのない競技の部活動をもたされ困っています。全く知識もなく、ルールも分からない世界に飛び込んで、さらに生徒に技術指導もしなければならないのはとても負担が大きいのです。大会や練習試合の時など、監督として席に着いているのに何も指導できない自分にやきもきします。もともと運動の苦手な私です。学校に行くこともつらくなっています。どうしたらよいでしょうか。(W、女性、教師歴1年)

A 見事採用試験に合格し、教師としての歩みを始めた1年目に、部活動のことでつらい思いをされているとのこと。決して他人事ではないと感じます。教科指導や生徒指導、学年学級事務、学校行事に新任研修と、仕事に追われる毎日が続いていると想像できます。

 それに加えて、苦手意識のある運動部の顧問となったことは、精神的にも肉体的にも苦しい状況かと思います。

 もし、自分が経験したことのある部活動を担当していたらどうだったでしょうか。顧問として、子供たちにもっと技術指導ができたはずです。経験を生かし、今よりもずっと見通しをもって部活動運営ができたに違いありません。

 少しでも現状を打破し、やきもきした思いから好転していけるように3つのことを進言したいと思います。

 1つ目は、担当している競技について知識を得ていくことです。競技ルール、審判の仕方、大会の流れなどを学ぶことは指導の第一歩です。経験のないことを逆手に取り、子供たちや経験者から謙虚に学ぶ姿勢を持つとよいです。かく言う私も、経験のある部活動に就くまでに2つの運動部を担当しました。顧問就任一週間後に審判をやる状況になったときも、子供たちに助けてもらいました。その後も当然すぐには技術指導ができません。前任者や試合相手の先生方にたくさん尋ね、ルールや練習方法、指導方法を一から教えていただきました。専門書やテレビ観戦も勉強になりましたが、上の大会や実業団や高校の試合を実際に観戦することが一番有効でした。どんな練習をするのか、監督は選手にどんな言葉掛けをしているのか、大きな学びになりました。子供たちは、先生が学ぶ姿勢を必ず見ています。未経験で、技術指導に限界があるからこそ、理論や指導方法を学び、まずはまねすることから始めてみてはどうでしょうか。

 2つ目は、身近な人へ相談を小まめにすることです。顧問としての悩みは多岐にわたります。部活動運営での困り事を誰かに話すことで解決のヒントをたくさん得ることができます。同じような未経験の先生との悩みの共有、経験豊富な先生からの助言は、とても大きな力になります。文化部、運動部の違いはありますが、部活動運営の本質は変わらないと考えます。躊躇せずに自分の悩みを話してみましょう。

 3つ目は、子供たちを大切に考えることです。経験がなくても、素晴らしい部活動運営をする先生に、これまでたくさん出会ってきました。子供たちの意欲や頑張り、達成感を引き出し、信頼関係を築いていく原点は、子供たちへの思いです。顧問である前に一人の教師として、子供たちとのつながりを大事にしながら、地道に取り組むことを忘れないでほしいです。

 今、部活動の在り方が大きく変わろうとしています。地域移行に向けて、県下の各市町村でも改革に向けての整備方策が少しずつ検討されています。近い将来、学校の中で教師だけが指導する部活動はなくなっていくでしょう。そんな時代が来ても、与えられた環境で、目の前の子供たちのために奮闘したことは、必ずあなたの財産になります。どうか子供たちと共に、前へ歩みを進めていってください。心から応援しています。

 (中立香・岡崎市立本宿小学校長)

広 告
広 告