私は教員になってからずっと大切にしていることがある。それは、本物を見たり触ったりすること、現地に行って規模や雰囲気を知ること、やってみることである。五感を使って実感することをできるだけ子どもたちに経験させたいと考えてきた。分からないことをインターネットで手軽に調べたり、バーチャルな体験ができたりするようになった現在、感性を磨く実体験がより一層必要であると感じている。
10年以上前に2年生を担任して生活科でサツマイモを育てた際、収穫したサツマイモで子どもたちと芋きんとんを作った。ゆでたサツマイモと少しの砂糖をチャック付きの保存バックに入れ、おのおので袋をもんでサツマイモをつぶした。つぶしたサツマイモをスプーンですくってラップの上に乗せ、きゅっと絞ってきんとんは完成。できあがったきんとんはその場でほおばった。準備から片付けまで大変であったが、この後に書かせたワークシートを読んで、その苦労も喜びに変わった。五感を駆使した体験により、使われている言葉が実に豊かであった。
今年の6月、本校の5年生が、4年ぶりに田植えを体験した。田植えをするにふさわしい服装を用意することに始まり、どろどろの田んぼに入っていく感触、匂い、ずっとかがんで行う田植えの作業など、貴重な経験となったことだろう。
さまざまな経験が子どもたちの生きる力を育てると信じ、今後も感性を豊かにする活動を提供できるように努めたい。
(杉浦圭子・高浜市立翼小学校教頭)