(こだま)司馬遼太郎生誕100年

(こだま)司馬遼太郎生誕100年
【協賛企画】
広 告

 今年は司馬遼太郎さんの生誕100年。没後27年にあたる。これほどの歳月を経てもなお、司馬作品は読み継がれている。初刊から半世紀以上が経過するも『竜馬がゆく』は2477万部、『坂の上の雲』は1976万部。まさに「国民作家」と言われるゆえんである。

 司馬さんは、小中学校の教科書に3つの作品を書き下ろしている。その一つが、『二十一世紀に生きる君たちへ』(小6教科書に収録)である。初めて子供向けに書いたエッセーということで話題になった。司馬さんは自身が21世紀を迎えられないことを予期し、21世紀を担っていく子供たちに強烈なメッセージを込めたものだった。くしくもこの作品は司馬さんの遺書ともなった。その一部を引用する。

 「『いたわり』『他人の痛みを感じること』『やさしさ』みな似たような言葉である。この三つの言葉は、もともと一つの根から出ているのである。この根っこの感情が、自己の中でしっかり根づいていけば、他民族へのいたわりという気持ちもわき出てくる。君たちさえそういう自己を作っていけば、二十一世紀は仲良しで暮らせる時代になるのに違いない」

 さらに思いは続く。「根っこの感情」を身に付けるためには訓練をしなければならない。友達が転んだ時、ああ痛かったろうなと感じる気持ちをそのつど自分の中で作り上げていきさえすればよい。その先に、「他民族へのいたわり」や「人類が仲良く暮らせる時代」が生まれると説く。

 世界の情勢に目を転じたとき、残念ながら今も戦火に苦しむ人々がいる。歴史からの学びを大切にする司馬さんの「人類は歴史から何一つ学べないのか」という嘆きの声が聞こえてきそうである。

 司馬さんは『二十一世紀に生きる君たちへ』の最後に、「君たちの未来が真夏の太陽のように輝いているように感じた」とまとめた。今大人であるわれわれは彼の期待にしっかりと応えられているだろうか。彼の言う訓練を積む必要があるのではないか。

広 告
広 告