【私を支えた「この一冊」(39)】師道

【私を支えた「この一冊」(39)】師道
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 採用試験に合格し、晴れて教職に就くことが決まった日、かつて教師だった叔母から、一冊の古い本を手渡された記憶がある。忘れてしまいそうな記憶を何とか手繰り寄せ、本棚の隅から引っ張り出したのが、小原國芳氏の「師道」という本である。

 半世紀以上も前に書かれた一節に、今さらながら目が留まる。「完成された人格や学識が必要でなく絶えず進歩していくことが、教師の最も大切な資格である」

 想像を超えるスピードで変化し続ける今の時代、過去の踏襲や固執は意味をなさない。新しいものを学ぶ努力と古いものを捨て去る勇気を持ち、歳を取っても成長を続けられる教師でありたい。埃まみれの本は、そのことを改めて自分に教えてくれた。

 (太田智・名古屋市立東港中学校長)

小原國芳 著 玉川大学出版部
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