ある生徒の事案に対応したケース会議のことです。「この生徒は最近授業中に寝ています」「それはよかったですね」
この生徒は、学校はもちろん家庭においても自分をうまく表現できませんでした。不安の中から問題行動によって自分の居場所を確かめようとする行為を重ねていたのです。そんな生徒が、学校において安心して自分を表現できるようになったと考えれば、その生徒は「成長した」と評価し、先の会議となるわけです。私たちは、成長と支援の確かさを共に喜び合うことができました。そして、新たな次のステップを目標とした支援を考えていくエネルギーにつなげることができました。
表面的な形だけを捉え、過去の経験に基づく一律の価値観だけでは解決できないことが本当にたくさんあります。そんな時だからこそ、物事の本質を見つめる力が一層重要になっていると感じます。例えるのなら、海面上の氷山の姿を見て、海面下にあるより大きな氷山の姿を懸命に見取っていくようなものです。
「よく見て つなげて 喜び合う」は本校の学校経営方針です。目の前の点としての事実を丹念に見取り受け入れる。その点と点をつなぎ合わせて、より本質的な姿を捉えていく。さらにその先には、関わる本人、保護者、教職員など関係者がみんなで喜び合えるような姿をイメージしています。これは、生徒指導のみを対象としているのではなく、授業や学級経営、さらには、組織の在り方、PTAや地域との連携など、学校教育の全てにおいても意識しています。
昨今の諸課題・改革への対応も同じではないでしょうか。働き方改革、教員の魅力、部活動問題など、その本質はどこにあるのでしょう。どうしたら関係者みんなが喜び合えるのでしょう。改革の表面的な事象だけで振り回されるのではなく、その本質にあることや目的をしっかりと見極め、その価値を丁寧につなぎ合わせて、みんなで喜び合えるようにしていきたいと私は考えています。そのために私が今できることは何か。
「よく見て」いくことを改めて大切にしていきたいと思います。そして、その先にある喜び合う姿を自身の言葉で語れるよう心掛けていきたいと思っています。
(西尾市立西尾中学校長)